ゴマフアザラシ(その他表記)Phoca largha; Larga seal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴマフアザラシ」の意味・わかりやすい解説

ゴマフアザラシ
Phoca largha; Larga seal

食肉目鰭脚亜目アザラシゴマフアザラシ属。体長は雄約 1.7m,雌約 1.6m,体重は 82~123kgに達する。出生体長 77~92cm,出生体重7~12kgである。体毛は光沢のある灰色あるいは灰褐色で,黒色白色の小斑が全身に散在する。上毛と下毛に分けられ,下毛は綿毛のように密である。出生仔は全身,細長く白色の柔らかい毛でおおわれるが,離乳後換毛し成獣と同色となる。体は太い紡錘形で,頭は小さく額が狭い。鼻孔は小さく吻端にありV字状である。耳介はなく耳孔は眼の後方やや下側に位置し比較的大きい。吻にはちぢれた感覚毛がまばらに生える。前肢の指間に蹼 (みずかき) があり,後肢は鰭 (ひれ) 状で,四肢は毛が密生する。尾は短い。門歯は上顎6本,下顎4本,犬歯は上顎と下顎に各2本,頬歯は上顎と下顎に各 10本である。定期的に索餌を行いながら,流氷の上で繁殖する。オホーツク海黄海日本海およびベーリング海に広く分布する。冬から初夏にかけては氷縁の南側に,晩夏から秋にかけては河口付近を含む沿岸に生息する。

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改訂新版 世界大百科事典 「ゴマフアザラシ」の意味・わかりやすい解説

ゴマフアザラシ
largha seal
Phoca largha

鰭脚(ききやく)目アザラシ科の哺乳類。海氷上で繁殖。陸岸に出現し,人間との接触が非常に多い中型のアザラシ。体長は1.8m前後,体重は雄150kg,雌120kgになる。陸岸で繁殖するゼニガタアザラシ近縁種であり,近年まで同一種とされていた。背部は光沢のある灰黒色の地色を呈し,白色,黒色小斑がたくさんあり,ゴマをまいたように見える。名もこれによる。オホーツク海,ベーリング海に分布し,一部は中国の渤海湾にも分布する。流氷上での繁殖期以外は沿岸に生息し,河口,内湾域の中州や海岸近くの岩礁に上陸する。ゼニガタアザラシは大西洋の各地,北海道や千島列島アレウト列島,アラスカ,北アメリカ西岸にも分布し,陸上で繁殖する。漁場を荒らすため漁業者にきらわれる。
アザラシ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴマフアザラシ」の意味・わかりやすい解説

ゴマフアザラシ
ごまふあざらし / 胡麻斑海豹
spotted seal
largha seal
[学] Phoca largha

哺乳(ほにゅう)綱鰭脚(ききゃく)目アザラシ科の動物。ゴマフアザラシ属の1種で、海氷上で繁殖する。ベーリング海、オホーツク海に分布し、種々の魚や軟体動物を食べる。本種は、北太平洋、北大西洋に広く分布し陸岸で繁殖するゼニガタアザラシとは近縁で、かつては亜種関係と思われていたが、近年両者の繁殖上の隔離が確認され、海氷繁殖種をゴマフアザラシとして独立種とした。体長1.8メートルの中形種。背部の灰褐色の地色にゴマをまいたような小斑(しょうはん)があり、名前の由来となっている。新生子は白色の新生子毛をもつ。

[内藤靖彦]


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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ゴマフアザラシ」の解説

ゴマフアザラシ
学名:Phoca largha

種名 / ゴマフアザラシ
科名 / アザラシ科
日本にいる動物 / ◎
解説 / 体に黒いだ円形の斑点があります。300mまでもぐれます。水族館でよく飼育されています。
体長 / 1.6~1.7m
体重 / 80~120kg
食物 / 甲殻類、魚、タコ
分布 / オホーツク海、黄海、日本海、ベーリング海

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世界大百科事典(旧版)内のゴマフアザラシの言及

【アザラシ(海豹)】より

…南半球では種分化を促す陸地の障壁が北半球ほど複雑でないため種類が少ない。北半球では,北太平洋にクラカケアザラシ(イラスト),アゴヒゲアザラシ,ゴマフアザラシ(イラスト)の3種,北大西洋にハイイロアザラシ(イラスト),ズキンアザラシ,タテゴトアザラシ(イラスト)の3種,両方にワモンアザラシ(イラスト),ゼニガタアザラシ(イラスト)の2種が分布する。北半球の低緯度地方にはモンクアザラシ類3種とキタゾウアザラシが分布し,カスピ海やバイカル湖にもワモンアザラシ類2種が分布する。…

※「ゴマフアザラシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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