サクサン(読み)さくさん(英語表記)Chinese oak silkworm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サクサン」の意味・わかりやすい解説

サクサン
さくさん / 柞蚕
Chinese oak silkworm
[学] Antheraea pernyi

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤママユガ科に属する昆虫。はねの開張10センチメートル内外。前翅翅頂は雄では強く、雌では弱く出っ張り、横脈上に眼状紋があって、その中央は透明。触角は櫛歯(くしば)状であるが、雌では枝が短い。中国北部原産で、繭から糸をとるため、日本やヨーロッパ絹糸虫(けんしちゅう)として移入され、飼育されている。幼虫は緑色をした太いイモムシで、各環節の中央部で膨れ、境でくびれている。食草はクヌギカシワコナラ、クリ、ブナなどで、ヤママユと同じように野外に網を張って放飼される。日本土着のヤママユと非常に近縁で、雑種をつくることができるので、品種改良の目的で種々の交配実験が行われている。1年に2回発生し、蛹(さなぎ)で越冬する。春柞蚕は4月、秋柞蚕は7、8月に幼虫が出る。繭は葉に包まれてつくられ、短い柄をもつ。楕円(だえん)形で暗褐色または白褐色。春のものは秋のものより多くの絹糸を産する。繭からとった淡褐色の糸は光沢があって絹糸に似ている。この糸からつくった織物を絹紬(けんちゅう)という。現在では実用上あまり重要視されていない。ヤママユは、移入先のヨーロッパの一部で野生化してしまったが、サクサンではこのようなことはおきていない。

[井上 寛]

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