日本大百科全書(ニッポニカ) 「サラマーゴ」の意味・わかりやすい解説
サラマーゴ
さらまーご
José Saramago
(1922―2010)
ポルトガルの作家。首都リスボンから北東に100キロメートルほど離れた小村アジャニガに生まれる。高等中学校を中退後、溶接工や公務員などさまざまな職を転々とした。1947年、最初の小説『罪の土地』を発表。1960年代末から1970年代前半には、共産党員・ジャーナリストとして、ポルトガル革命にかかわった。1975年には、ポルトガルの全国紙『ディアリオ・デ・ノティシアス』の副主幹を務めたが失職。専業作家となり、長編の『絵とカリグラフィーの手引き』(1977)、それに続く『大地より立ちて』(1980)を発表した。修道院の建設を背景に宗教論をからめて描いた『修道院回想録――バルタザルとブリムンダ』(1982)や『リカルド・レイスの死の年』(1984)は初期の代表作となった。
イベリア半島が大西洋を漂流する『石の筏(いかだ)』(1986)や、キリストの生涯を描いた『イエス・キリストによる福音書』(1991)は大論争を巻き起こし、カナリア諸島ランサローテ島への移住を余儀なくされた。すべての人が盲目になった世界を描いた『白の闇(やみ)』(1995)、役人がアイデンティティの迷宮に迷い込む『あらゆる名前』(1997)など、アイロニーを盛り込んだ寓話(ぐうわ)によって現実を描く作風で知られる。
1998年、ポルトガル語圏の作家として初めて、ノーベル文学賞を受賞した。
[編集部]
『谷口伊兵衛、ジョバンニ・ピアッザ訳『修道院回想録――バルタザルとブリムンダ』(1998・而立書房)』▽『雨沢泰訳『白の闇』(2001・NHK出版)』▽『黒木三世訳『見知らぬ島への扉』(2001・アーティストハウス)』▽『星野祐子訳『あらゆる名前』(2001・彩流社)』▽『岡村多希子訳『リカルド・レイスの死の年』(2002・彩流社)』