サワギキョウ(その他表記)Lobelia sessilifolia Lamb.

改訂新版 世界大百科事典 「サワギキョウ」の意味・わかりやすい解説

サワギキョウ (沢桔梗)
Lobelia sessilifolia Lamb.

キキョウ科多年草で,山間湿地に群生する。キキョウの名はあるが,花冠は2唇形を呈し,おしべは合生して花柱をとり囲んでいるなど,キキョウとは大きく違っている。キキョウ科ではミゾカクシ亜科とされる。茎や葉は無毛。茎は高さ50~100cm,太さ1cmに及び,分枝しない。葉は多数が互生し,披針形,長さ4~10cm。柄はなく,縁に細かい鋸歯がある。花は青紫色,多数が総状につき,横向きに咲く。花冠は長さ約3cm。子房は下位,2室。花期は8~9月。果実は頂端で裂開する。日本全域のほか,東アジアに広く分布している。有毒物質ロベリンlobelineを含むが,若芽をゆでて煮こぼし,さらしてから食用にすることもある。同属のミゾカクシL.chinensis Lour.(一名アゼムシロ)は,田のあぜや溝のそばなどの湿った所に生育する匍匐(ほふく)性の多年草で,花は葉腋(ようえき)に1個ずつつき,白色。全草にロベリンを含み,生薬では半辺蓮(はんぺんれん)と呼ぶ。中医方では他の生薬と配合して喉頭癌の治療および予防に,また単独で用いて慢性腎炎肝炎などの利尿薬として効果がある。

 ミゾカクシ属Lobelia全世界に350種以上もある草本性の属だが,ジャイアントロベリアのように茎が太く木化するものや,花のきれいな種が多く園芸植物として栽培もされる。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サワギキョウ」の意味・わかりやすい解説

サワギキョウ
さわぎきょう / 沢桔梗
[学] Lobelia sessilifolia Lamb.

キキョウ科(APG分類:キキョウ科)の多年草。茎は直立して枝分れしない。葉は多数互生し、披針(ひしん)形で縁(へり)に細かい鋸歯(きょし)があり、葉柄はない。8月ころ、茎は1メートルほどに伸び、茎頂に10花以上からなる総状花序をつける。花は濃青紫色でよく目だち、唇形で上下に開き、上側は2裂し下側は3裂する。日当りのよい湿原に生え、日本を中心に千島列島、朝鮮半島、中国東北部、シベリアなどに広く分布する。季節感の著しい野草で、茶花などに人気がある。初夏のころ、長く伸びた茎を切り、浅い泥土中に挿芽すると、容易に殖やすことができる。水湿地に植えたり、水鉢に泥を入れて植える。

 同類のベニバナサワギキョウ(紅花沢桔梗)L. cardinalis L.は北アメリカ産で、高さ約1メートル、長楕円(ちょうだえん)形の葉が多くつく。7月ころ、茎上方に鮮紅色の花が段咲きとなる。春に種を播(ま)くと翌春に花を開く。株分けによっても殖やせる。

[鳥居恒夫 2021年10月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サワギキョウ」の意味・わかりやすい解説

サワギキョウ(沢桔梗)
サワギキョウ
Lobelia sessilifola; lobelia

キキョウ科の多年草で,アジア東部の冷温帯に広く分布し,湿地に群生する。花を除いては全草が無毛で,茎は分枝せず直立し,高さ 60~100cmもあって中空である。葉は無柄で長さ5~7cmの披針形,縁に細かい鋸歯があり,茎に密に互生する。花は8~9月に,茎の上部に総状花序をなして咲く。花冠は鮮かな紫色で,唇形に深く5裂し,裂片の縁には長い軟毛がまばらに生える。果実は壺状の 蒴果で,長さ 1cmほどである。有毒成分ロベリンが含まれるため,全草毒草で,もし誤って食べると呼吸麻痺やけいれんなどの中毒症状を示すという。花壇や鉢植にして栽培される同属のロベリアは,観賞用ばかりでなく,薬用にもされる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「サワギキョウ」の意味・わかりやすい解説

サワギキョウ

北海道〜九州,東アジアの日当りのよい山野の湿地にはえるキキョウ科の多年草。茎は枝分れせず直立し,高さ60〜100cm,披針形で細鋸歯(きょし)がある柄のない葉を互生する。8〜9月,茎の上部に紫色の花を総状につける。花冠は長さ2.5〜3cm,唇形(しんけい)で,上唇は2深裂,下唇は3裂する。
→関連項目ロベリア

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のサワギキョウの言及

【ロベリア】より

…日当りのよい湿気の多い場所でよく育ち,夏涼しく冬暖かい所では枯れずに宿根する。 ミゾカクシ属Loberiaの植物は世界に350種が分布し,カナダ,北アメリカの湿地にはベニバナサワギキョウL.cardinalisL.(英名cardinal flower,scarlet loberia)があり,高さ1mの茎に緋紅色の花をつける。日本の山地の湿地にはサワギキョウが分布し,高さ1mほどになる直立した茎に,総状に青紫色の花をつける。…

※「サワギキョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android