サンヌーベルヌーベル(英語表記)Les cent nouvelles nouvelles

改訂新版 世界大百科事典 「サンヌーベルヌーベル」の意味・わかりやすい解説

サン・ヌーベル・ヌーベル
Les cent nouvelles nouvelles

題は《新百話》の意で,1456-61年ころ,遅くともブルゴーニュ公フィリップ善良公の没年(1467)までに成立した小話集。公とその周辺に実在した35人の語り手と1人の無名編者によって炉辺で語られたことになっているが,作品中の詞書,文体の統一性より見て1人の作者ないし編者によるものと推定される。形式的には当時《サン・ヌーベル(百話)》と訳されるのが常であったボッカッチョの《デカメロン》を模倣してはいるが,主題,語り口,人物の造形はそれにほど遠く,ファブリオーフィレンツェの作家ポッジョ・ブラッチョリーニの小話により多くを負う。主題の一部は口碑または実際の事件による。好色で狡猾な女と破廉恥な僧が主役を演じ,中世の反教権的・反女性的伝統が濃厚である。文体は生彩に乏しく,筋の運びも巧妙とは言い難いが,当時の風俗を再現し興味深い。16世紀前半まで流行し多くの模倣を生むが,以後ラ・フォンテーヌ,バルザック(《風流滑稽譚》)を除いて衰退する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンヌーベルヌーベル」の意味・わかりやすい解説

サン・ヌーベル・ヌーベル
さんぬーべるぬーべる
Les cent nouvelles nouvelles

フランス中世末期のみだらな小話集。新百物語の意。ボッカチオの『デカメロン』の模倣であり、またポッジョPoggio Bracciolini(1380―1459)の『百物語』や『笑話集』から着想を得ている。成立年代は1456~61年ごろ。貴族たちが集まってかわるがわる奇談小話を語り合う体裁になっている。語り手はブルゴーニュ公フィリップ3世の側近たちで、36人の実在した人物の名があげられている。編者は第50話の作者アントアーヌ・ド・ラ・サルに擬せられているが、さだかではない。各小話は、女たちと女たらしたちが自分たちの欲望を満たすために弄(ろう)した悪知恵を語っているが、筋立て機知に富んだことばに支えられており、登場人物は、だまされた亭主や悪賢い女房、堕落した修道士や気の利いた娘などがくだけた調子で絵画的に描かれている。風刺や人間観察には欠けるが陽気な物語で、風俗史的にも興味深い。

[目黒士門]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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