ザダル(読み)ざだる(英語表記)Zadar

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザダル」の意味・わかりやすい解説

ザダル
Zadar

クロアチア南西部の都市。ダルマチア海岸に位置し,島に囲まれた天然の良港をもつ。前1世紀にローマ属領となり,西ローマ帝国滅亡後はビザンチン帝国ダルマチアの行政,文化の中心地として繁栄した。10世紀にクロアチア王国に属し,以後ベネチア共和国(→ベネチア)との間で長い戦いが続いたが,1409年にクロアチア王によってベネチアに売り渡された。1797年オーストリア領,1920年イタリア領,1944~91年旧ユーゴスラビア領となった。水産加工,繊維工業が行なわれるほか,有名なチェリーブランデーのマラスキノ酒(マラスカ)を産する。特異な円形をなす 9世紀の聖ドナーツ聖堂をはじめ,聖マリア聖堂(1091),ロマネスク建築の聖クルシェバン聖堂(1175)など歴史的建築物が多い。ベネチア共和国支配のもとで築かれた要塞などの防衛施設は,16~17世紀の共和国の版図拡大と繁栄ぶりを伝えるものとして,2017年イタリア,クロアチア,モンテネグロの 5ヵ所の構成資産とともに国際連合教育科学文化機関 UNESCO世界遺産の文化遺産に登録された。考古学博物館,公文書館,劇場,ザグレブ大学分校がある。人口 7万1471(2011)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザダル」の意味・わかりやすい解説

ザダル
ざだる
Zadar

クロアチア共和国南西部の都市。ダルマチア地方の海岸に位置し、アドリア海に臨む。人口7万2718(2001)。入り江が天然の良港をなし、一部は漁港となっている。周辺の丘ではブドウ、オリーブなどが栽培される。鉄道、道路、フェリーによって周辺地域と結ばれている。マラスキノ、チェリー酒などのリキュールが特産であるほか、たばこ造船、漁業用機器、編物機械などの工場がある。紀元前4世紀にイリリア人の町として建設され、ヤデルJaderの名でよばれた古い町。前2世紀にはローマの植民都市となり、ビザンティン、ベネチアの支配を経て、第一次世界大戦までオーストリア・ハンガリー帝国の支配下にあった。1918~1945年イタリア領(イタリア語名はザラZara)、1947年パリ条約により旧ユーゴスラビアに帰属したが、1991年クロアチアは独立した。ローマ遺跡があるほか、13世紀の銀細工が施された聖ドナト教会の大聖堂など多くの中世の教会があり、観光保養地ともなっている。スプリト大学の哲学部、考古学・民俗学博物館もある。

[漆原和子]

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