出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
全身麻酔の方法の一つ。ガス麻酔薬あるいは揮発性麻酔薬を吸入させることによって、全身麻酔を得る方法である。現在、麻酔法としてはもっとも広く用いられている。吸入麻酔薬としては、ガス麻酔薬では笑気、揮発性麻酔薬ではハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルランなどがあり、これらの物理化学的性質その他の比較は
に示すとおりである。表にある「最小肺胞気中麻酔ガス濃度」とは、皮膚に切開を加えても50%の人は体を動かさないという濃度であり、各麻酔薬の強さや薬理作用の比較に用いられる。また「血液溶解度」は、値の小さいものほど麻酔への導入や麻酔からの覚醒が速やかである。
[山村秀夫・山田芳嗣]
(1)開放点滴法 揮発性麻酔薬をガーゼの上に滴下し、しみ込ませ、これを吸入させる方法である。簡単な方法であるが、麻酔薬が不経済であるし、吸入する麻酔薬の濃度も規定することができないため、現在ではほとんど用いられない。
(2)吹送法 口腔(こうくう)内に細い管を通して麻酔薬を吹き込み、これを患者に吸入させる方法である。
(3)Tチューブ法 気管内チューブにT型またはY型の管をつけ、一方から麻酔ガスを送り、もう一方は外界に開放しておく方法であり、いろいろな変法がある。
(4)循環式麻酔器を用いる方法 これには、呼吸回路が外界とまったく交通しない閉鎖式と、呼気の一部が外界に出される半閉鎖式とがある。
(5)非再呼吸法 マスクまたは気管内を通して麻酔薬を吸わせ、呼気は、すべて外界に出されるものである。
[山村秀夫・山田芳嗣]
麻酔の深さを判定するには、生体の変化を臨床的に観察して行うが、その深さは四つの時期に分けられる。第1期は、意識はまだ消失しないが、痛覚がなくなる時期で、無痛期とよばれる。第2期は興奮期で、患者は無意識のうちに暴れることがある。第3期になると興奮はなくなり、呼吸は平静となり、一般の手術も可能となる。第4期は、深すぎて呼吸も停止し、瞳孔(どうこう)も散大する時期である。このような徴候はエーテル麻酔の場合にははっきり現れるが、その他の麻酔薬ではわかりにくい。そのためこれを目安として麻酔深度を調節することはあまり行われていない。麻酔深度を評価する方法にはその他、食道括約筋の圧を目安にする方法などいくつか考えられているが、一般には血圧や筋の緊張度など臨床徴候から判定している。近年には脳波から麻酔深度を点数化するような計測機器が臨床的に普及してきており、臨床徴候からの判定を補助している。麻酔の第1期すなわち無痛期は、歯科治療などの麻酔として用いられることもある。
[山村秀夫・山田芳嗣]
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
…全身麻酔は麻酔薬の投与方法により吸入麻酔と静脈麻酔に分けることができる。
[吸入麻酔inhalation anesthesia]
笑気のようなガス麻酔薬,ハロタンなどのような揮発性麻酔薬を吸入させて全身麻酔を起こす方法である。麻酔薬は肺から摂取され血液に溶解し中枢神経にも分布する。…
…これらの徴候は使用する麻酔薬の種類,濃度などにより程度の差が生じ,浅い麻酔では抑制と興奮が混在することがある。全身麻酔は麻酔薬の投与方法により吸入麻酔と静脈麻酔に分けることができる。
[吸入麻酔inhalation anesthesia]
笑気のようなガス麻酔薬,ハロタンなどのような揮発性麻酔薬を吸入させて全身麻酔を起こす方法である。…
※「吸入麻酔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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