家庭医学館 「しぶり腹」の解説
しぶりばらてねすむすりきゅうこうじゅう【しぶり腹(テネスムス/裏急後重)】
しぶり腹がなぜおこるのかを説明する前に、正常の排便のしくみについて解説します。
大腸(だいちょう)は小腸(しょうちょう)に続く腸管で、盲腸(もうちょう)→上行結腸(じょうこうけっちょう)→横行(おうこう)結腸→下行(かこう)結腸→S状結腸→直腸(ちょくちょう)に分かれています。大腸のおもな機能は、水分・電解質(でんかいしつ)の吸収と排便にあります。水分の吸収は上行結腸、横行結腸で多くがなされ、その結果、下行結腸、S状結腸ではかたまりとしての便が形成されていきます。
ほどよくかたくなった便塊(べんかい)がS状結腸下部から直腸に進入すると、腸の内圧が高くなり、それと同時に排便反射(はいべんはんしゃ)が生じ、便意をもよおして排便となるわけです。
したがって、排便反射は直腸の刺激により制御(せいぎょ)されているといえます。
しぶり腹とは便塊の刺激によらない直腸‐排便反射が生じることであり、そのため便が出ないのに便意をもよおすのです。
しぶり腹がおこる原因としては、直腸の炎症が考えられます。直腸に炎症をおこす病気はいろいろありますが、赤痢(せきり)、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)などが代表です。
一般の大腸炎でもしぶり腹となることもありますが、長引くときは精密検査が必要となります。