シャルコー(読み)しゃるこー(英語表記)Jean Martin Charcot

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャルコー」の意味・わかりやすい解説

シャルコー
しゃるこー
Jean Martin Charcot
(1825―1893)

フランスの神経病学者。パリに生まれ、1853年パリ大学卒業。その後、病院に勤務し、1872年パリ医科大学病理解剖学教授となる。1882年シャルコーのために新設されたサルペトリエール病院の神経病科教授となった。多くの研究論文を発表したが、1872年刊行の『サルペトリエール神経系統疾患講義集』がもっとも有名で、そのなかで、脊髄癆(せきずいろう)の病変像を明らかにし、その電撃性疼痛(とうつう)や関節痛を記載したり、脊髄癆性進行性筋萎縮(いしゅく)と筋萎縮性側索硬化症を鑑別し、振戦麻痺(しんせんまひ)と多発性硬化症とを区別した。また、ヒステリーについても重要な研究を行い、さらに、肝臓腎臓(じんぞう)、胆管の疾患についても貴重な論文を発表した。なお、探検家シャルコーJean Baptiste Étienne Auguste Charcot(1867―1936)は彼の息子で、1910年南極半島西方に発見した島を、父にちなんでシャルコー島と命名した。

[大鳥蘭三郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シャルコー」の意味・わかりやすい解説

シャルコー
Charcot, Jean-Martin

[生]1825.11.29. パリ
[没]1893.8.16. ニエーブル,ラックデセトン
フランスの神経病学者。 1860~93年,パリ大学病理解剖学教授。 62年からサルペトリエール病院にも勤務し,82年,新設の神経病学教室の教授となった。同病院でヒステリーおよび催眠術を神経科学の立場から研究し,ヒステリーの症候を明確にした。これは,のちに精神医学の分野に心理学的方法を導入する手掛りとなり,R.ジャネ,S.フロイトによって継承された。神経学の領域では筋萎縮性側索硬化症,多発硬化症,脊髄癆を正確に記述し,神経学の方法論を確立した。この領域の弟子には J.ババンスキー,P.マリー,三浦謹之助らがいる。主著"Leçons sur les maladies du système nerveux" (1872~83) ,"Localisations dans les maladies du cerveau" (80) ,"Iconographie de la Salpêtriere" (76~80) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android