ジャネ(読み)じゃね(英語表記)Pierre Janet

デジタル大辞泉 「ジャネ」の意味・読み・例文・類語

ジャネ(Pierre Janet)

[1859~1947]フランスの心理学者・精神医学者。ノイローゼヒステリーに関する独自の理論を展開し、ユングらに影響を与えた。著作に「ヒステリーの精神状態」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ジャネ」の意味・読み・例文・類語

ジャネ

  1. [ 一 ] ( Pierre Janet ピエール━ ) フランスの心理学者、精神医学者。精神衰弱、ヒステリーの概念を精神医学の中心に据え、フロイトなどに影響を与えた。主著「ヒステリーの精神状態」。(一八五九‐一九四七
  2. [ 二 ] ( Paul Janet ポール━ ) フランスの唯心論哲学者。政治哲学道徳哲学の歴史を研究。ソルボンヌ大学教授。主著「政治哲学史」。(一八二三‐九九

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャネ」の意味・わかりやすい解説

ジャネ
じゃね
Pierre Janet
(1859―1947)

フランスの代表的な異常心理学者。パリに生まれ、高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリュール)で学ぶ。サルペトリエール病院の心理実験室長、ソルボンヌ大学(パリ大学)教授、コレージュ・ド・フランスの教授などの要職につく。ヒステリーの二重人格に関する研究は有名で、フロイトの精神分析と類似したところもある。基本的には人格(精神)を統合分化の過程と考え、統合的な力が弱まると解離が生じ、神経症や精神病の症状をおこすと考える。トラウマによって解離がおこるという考え方は、精神医学に大きな影響を与えた。おもな著書に『強迫現象と精神衰弱』(1903)、『ヒステリーの精神状態』(1907、1911)、『人格の心理的発達』(1929)などがある。

[外林大作・川幡政道]

『関計夫訳『人格の心理的発達』(1955・慶応通信)』『ピエール・ジャネ著、松本雅彦訳『心理学的医学』(1981・みすず書房)』『ピエール・ジャネ著、松本雅彦訳『解離の病歴』(2011・みすず書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ジャネ」の意味・わかりやすい解説

ジャネ
Pierre Janet
生没年:1859-1947

フランスの心理学者,精神医学者。哲学者ポール・ジャネのおい。サルペトリエール病院でJ.M.シャルコー師事し,ヒステリーなどの臨床研究に従事した。正常な総合的精神活動と,過去の精神活動の反復にすぎない心理自動症を区別することによって精神病理学を確立,ついで心理自動症をその病的形態にもとづいて,ヒステリーと精神衰弱症に二大別した。さらに精神諸機能を階層的に8段階に分類し,おのおのの段階に心理学的諸機能を位置づけた。また晩年には,宗教病理現象や統合失調症の研究に力を尽くした。S.フロイトに先がけて同様な思想を講じたが,彼は最後までフロイトを理解しえなかった。著書に《ヒステリーの精神状態》(1893),《強迫観念》(1903),《神経症》(1909)などがある。また門下に,D.ラグーシュやH.エーがいる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジャネ」の意味・わかりやすい解説

ジャネ
Janet, Pierre (-Marie-Félix)

[生]1859.5.30. パリ
[没]1947.2.24. パリ
フランスの心理学者,精神病理学者。 J.シャルコーの門下となり,サルペトリエール病院の心理学実験室主任をつとめたのち,パリ大学講師,1902~36年には,コレージュ・ド・フランスの教授。ヒステリー患者の観察に基づき,人格の崩壊に関する独自の階層的緊張説を主張した。その体系は行為の心理学ともいわれ,精神療法に科学的な心理学的基礎を与えた先駆者の一人。主著『心理的自動症』L'Automatisme psychologique (1889) ,『ヒステリーの心的状態』L'État mental des hystériques (1911) ,『苦悩より恍惚へ』 De l'angoisse à l'extase (2巻,27~28) ,『知能の発生』 Les Débuts de l'intelligence (35) 。

ジャネ
Janet, Paul

[生]1823.4.30. パリ
[没]1899.10.4. パリ
フランスの哲学者。エコール・ノルマル・シュペリュール (高等師範学校) で V.クーザンに師事し,1848年その秘書。 56年ストラスブール大学,64~98年パリ大学教授。 64年学士院会員。内省に基づく唯心論の立場で心理学的形而上学を展開。科学の成果をも取入れようとした。政治論では自然法の立場から国家権力を制限した。主著"Histoire de la science politique dans ses rapports avec la morale" (1872) ,"Principes de métaphysique et de psychologie" (97) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ジャネ」の意味・わかりやすい解説

ジャネ

フランスの心理学者,精神医学者。サルペトリエール病院でシャルコーに師事。ヒステリーや精神衰弱について研究し,精神病理学を確立した。同病院心理学研究所長,コレージュ・ド・フランス教授。フロイトに先立って無意識の概念を提唱し類似の学説を講じたが,十分に体系化するには至らなかった。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

367日誕生日大事典 「ジャネ」の解説

ジャネ

生年月日:1823年4月30日
フランスの哲学者
1899年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のジャネの言及

【ヒステリー】より

…子宮説に対して脳に問題があるとはじめてみなしたのは,ルポアC.Lepois(1618)であり,情緒因子が一次的だと考えたのはブローディB.C.Brodie(1837)である。しかし,ヒステリーに対してはじめて根拠のある理論を提出したのは,J.M.シャルコー(1887),P.ジャネ(1889),J.ブロイアー(1895),S.フロイト(1895)である。そして彼らのなかで,心理的要因をもっとも重視したのは,ブロイアーとフロイトであり,二人の共著になる《ヒステリー研究》も刊行されている。…

※「ジャネ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android