日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラルジリエール」の意味・わかりやすい解説
ラルジリエール
らるじりえーる
Nicolas de Largillière
(1656―1746)
フランスの画家。パリに生まれ、同地に没。幼時から滞在したアントウェルペン(アントワープ)でアントアーヌ・グーボーの工房に入り、1672年に独立。ついでロンドンに渡り、オランダ出身のファン・ダイク派のピーター・レーリのもとで働き、82年フランスに戻った。84年アカデミーに入学、86年に修了制作として『シャルル・ルブランの肖像』(ルーブル美術館)を提出、アカデミー会員となる。彼の肖像画は、ファン・ダイク風の安定した構図を用いながらも、明暗の微妙な対比、衣服の材質感のみごとな表現に、レンブラントの影響を示している。この様式は1700年代に確立され、とくに当時のブルジョアジーに愛好された。
肖像画の代表作に『美しいストラスブールの娘』(1703、ストラスブール美術館)などがある。パリ市の委嘱で制作したモニュメンタルな奉献画『聖女ジュヌビエーブの前に立つパリ市の司法官たち』(1699、現サンテティエンヌ・デュモン教会蔵)もある。わが国では、東京の国立西洋美術館に『幼い貴族の肖像』(1714ころ)が収蔵されている。
[上村清雄]