改訂新版 世界大百科事典 「シャーンタラクシタ」の意味・わかりやすい解説
シャーンタラクシタ
Śāntarakṣita
8世紀のインド仏教の学僧。生没年不詳。漢訳名は寂護。ザホル国の王子に生まれ,ジュニャーナガルバについて出家し,ナーランダー僧院の長老となったと伝える。その後チベットのティソンデツェン王に招かれ,2度にわたってチベット入りし,サムイェー寺を創建,チベット人初の出家者を出すなど,インド仏教をチベットにひろめるのに尽力した。死に際し,当時チベットにひろまりつつあった中国仏教との論争を予想し,弟子のカマラシーラを招くように指示したという。その思想はダルマキールティの影響を強く受けた後期中観思想の代表であり,また唯識説をある程度認めたため,瑜伽行中観とも呼ばれる。著書に《摂真実論》《中観荘厳論》等がある。
→中観派
執筆者:松本 史朗
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