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唯識説 ゆいしきせつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

唯識説
ゆいしきせつ

インド仏教の瑜伽 (ゆが) 行派,中国仏教の摂論宗法相宗などが主張する,万有は識 (純粋な精神作用) にほかならぬとする説。縁起門の唯識説によれば,すべての存在は,根本の識である阿頼耶識の転変により構成されて生じるとされる。阿頼耶識をよりどころとして思量の働きをなす末那識と,眼,耳,鼻,舌,身の6識を生じ,阿頼耶識によって身体環境が,末那識によって自我意識が形成され,他の5識によって感覚作用がなされて,一切が認識されるという。インドでは弥勒無着,世親などの学匠によって組織的に説明され,中観派とともに有力な学派を形成した。中国では玄奘がこの説を伝え,弟子の窺基が大成した。日本には法相宗として伝わり,現在でも奈良の薬師寺,興福寺,京都の清水寺で研学されている。

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百科事典マイペディアの解説

唯識説【ゆいしきせつ】

インドの瑜伽行派(ゆがぎょうは),中国の摂論(しょうろん)宗,日本の法相(ほっそう)宗などの大乗仏教の一派の根本的立場。あらゆる存在や事象はただ心の本体たる識の作用によって仮に現れたにすぎないとする説。
→関連項目摂大乗論

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世界大百科事典 第2版の解説

ゆいしきせつ【唯識説】

インド仏教において,3~4世紀ころに興った大乗思想で,あらゆる存在は唯(た)だ識すなわちこころのはたらきで表された仮の存在にすぎないとみる唯心論サンスクリットでビジュニャプティ・マートラ・バーダvijñapti‐mātra‐vādaという。〈般若経〉に説かれる空の思想を受け継ぎながら,空を虚無主義ととらえる傾向を是正しようと,ヨーガの実践を好む人びとによって説かれ,〈あらゆる存在は心がつくり出した影像にすぎない〉という禅定体験に基づいているとされる。

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世界大百科事典内の唯識説の言及

【意識】より

…古代インドには,霊的,生命的なものを言い表す言葉の一つとして〈意manas〉(英語ではmindと訳される)という語があったし,また原始仏教では,現象界の分類(五蘊(ごうん)説)やその生成の説明(十二縁起説)に関して〈識vijñāna〉という語が用いられ,それによって了別の働きや個性化の原理が意味されていた。大乗仏教の時代には,十二縁起のうちの〈識〉によっていっさいを説明しようとする唯識思想(唯識説)が現れ,その中で,五官にかかわる五識を統一する第六識が〈意識〉と呼ばれていた。日本でも,この語は長い間そうした含蓄の仏教用語として用いられていたと思われるが,幕末以後,西洋の諸学が輸入されるにつれて,ヨーロッパ語の訳語という性格を強めながら今日に至っている。…

【唯心論】より

…またW.ジェームズも哲学を唯心論と唯物論とに区分し,前者を一神論と汎神論に分け,自己の〈根本的経験論〉は汎神論に属し一元論的な絶対的観念論に対立するものとした。【茅野 良男】
[仏教における唯心論]
 《華厳経》に説かれる〈三界唯心〉の思想や,瑜伽行唯識派の主張する唯識説などが仏教における唯心論の典型である。〈心の浄化〉を目的とする仏教は初期仏教いらい本質的に唯心論的傾向の強い思想であるが,あらゆる存在は心が作り出したものにすぎないという本格的な唯心論は《華厳経》の十地品にある〈三界は虚妄にしてただこれ心の作なり。…

※「唯識説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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