日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェニー」の意味・わかりやすい解説
ジェニー
じぇにー
François Gény
(1861―1959)
フランスの法学者。ディジョン大学(1891~1901)およびナンシー大学(1901~1925)で民法を担当する。彼は『実定私法における解釈方法と法源』(1899)において、従来の法学界の主流が法典の完結性を前提とし、すべての法的問題を法典からの演繹(えんえき)によって解決しようとする立場をとるのを批判し、新しい解釈方法を提唱した。彼は法典および慣習法には限定された役割しか認めず、法典および慣習法によって解決が与えられない場合には、裁判官は「自由な科学的探究」libre recherche scientifiqueによって新しい解決をみいだすべきであると説く。のちに大著『実定私法における科学と技術』4巻(1915~1924)において、この科学的自由探究に哲学的基礎を与えた。法典の進化的解釈を唱えたサレイユと並んで、ジェニーは、社会の変化がようやく顕著になった20世紀初頭における法解釈学に、新しい方法を与えることに寄与したといえる。
[高橋康之]