ジムカデ(英語表記)worm-like centipede

改訂新版 世界大百科事典 「ジムカデ」の意味・わかりやすい解説

ジムカデ (地蜈蚣)
worm-like centipede

唇脚綱(ムカデ綱)ジムカデ目Geophilomorphaに属する節足動物の総称。体長1~6cm。ミミズのような細長い体形で多数の足をもち,ふつう地中に生息している。褐色または朱色の頭には短い触角が1対あるが,眼は無い。胴は31以上約177の胴節からなり,各胴節に1対ずつの短い歩肢がある。体は黄色で,伸縮自在に蛇行運動をし,前進と同様に後退も自由にできる。トビムシ,ミミズ,クモなどを食べる。初夏のころに産卵し,雌は数十個の卵を抱えて保護する。孵化ふか)した幼虫白色で動かないが脱皮して黄白色の親と同じ体形になると母虫から離れ独立生活に入る。数回の脱皮を経て3年目に成熟するものが多い。世界中のほとんどの地域に分布する。日本産は約60種知られているが,関東地方以南にはやや大型のナガズジムカデ類,東北・北海道地方にはヨコジムカデ類がいるが,ツメジムカデヒロズジムカデは全国的にふつうに分布している。毒あごは小さく,人間には無害で直接の利害関係はない。
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ジムカデ (地百足)
Harrimanella stelleriana (Pall.) Coville

高山の岩地に生えるツツジ科矮小(わいしよう)の常緑低木。和名は地をはう茎や葉がムカデを思わせるのでいう。茎は多くの枝に分かれて,地をはう。葉は広線形で長さ2~3mm,幅0.5~0.8mm,裏面の中央が隆起し,横断面はやや三角状である。7~8月,茎の先に横向きの広鐘形の花を1個つける。萼は赤褐色,花冠は白色で長さ5mm。おしべは10本。葯の背面には2本のひげ状突起があり,葯室の先が開孔する。蒴果(さくか)は球形で径4mm。本州中部,北海道の高山,千島列島カムチャツカ,アラスカ,北アメリカに分布する。ジムカデ属Harrimanellaは北半球の寒帯に2種ある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジムカデ」の意味・わかりやすい解説

ジムカデ(節足動物)
じむかで / 地蜈蚣
地百足
worm-like centipede

節足動物門唇脚(しんきゃく)綱ジムカデ目Geophilomorphaに属するムカデの総称。地中生活に適応し、目がなく、体は多数の胴節に分かれ、蠕動(ぜんどう)運動に似た歩行をするのでこの名がある。全体は黄色ないし橙黄(とうこう)色。体長3~4センチメートルのものが多く、細長く、歩肢は31対以上で、多いものは177対まである。蛇行や前進後退が自由で、土中の割れ目に潜行し、小昆虫を捕食する。卵からかえったばかりの幼虫は成体と同じ歩肢対数を有し、脱皮を繰り返して約2年で成熟する。全世界に分布し、10科に分類される。日本産はそのうち5科約60種がある。代表的なヒロズジムカデ、ツメジムカデは歩肢41対で全国に分布。

[篠原圭三郎]


ジムカデ(常緑小低木)
じむかで / 地百足
[学] Harrimanella stelleriana (Pall.) Cov.

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。茎は細く針金状で地上をはい、長楕円(ちょうだえん)形で長さ2~3ミリメートルの小さな葉を密生するので、この名がついた。7~8月、立ち上がった枝先に広鐘形で長さ約5ミリメートルの白色花を1個、下向きに開く。花冠は5中裂し、萼片(がくへん)は紅紫色。高山帯のすこし湿った岩場に生え、中部地方以北の本州、北海道から北アメリカに分布する。ジムカデ属は北半球の寒帯に2種ある。

[小林義雄 2021年4月16日]


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