改訂新版 世界大百科事典 「ジュアンドー」の意味・わかりやすい解説
ジュアンドー
Marcel Jouhandeau
生没年:1888-1979
フランスの小説家。クールーズ県の生れ。青年時代パッシーの高等中学校に勤めるかたわら小説を書き始めた。作品は三つの系列に大別することができる。第1は《テオフィールの青春》(1921)などの系列である。ここでは美と絶対に憧れ,宗教的問題に煩悶していた作者の少年期が語られる。第2は《バンシュ--アナ》(1933)などの作品であり,これらでは学業のためパリと故郷の間を往復していたころの作者の鋭い人間観察と内省がみられる。第3は《親しいゴドー氏》(1926),《結婚したゴドー氏》(1933)などの,いわばゴドー氏の系列であり,ゴドー氏はすなわち作者のうちの魂の観察者としての心理学者,神に対抗しようとするニーチェ的哲学者である。おびただしい数のどの作品にあっても,作者は実生活から得た素材に独特な小説的脚色と文体をほどこして,人間と神との関係や自己救済の問題等を追究している。純粋状態にある罪や悪への作者の傾斜は,絶対の探究の一形式といえよう。
執筆者:若林 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報