改訂新版 世界大百科事典 「ジュウイチ」の意味・わかりやすい解説
ジュウイチ (十一)
Horsfield's hawk cuckoo
Cuculus fugax
ホトトギス目ホトトギス科の鳥。全長32cm。体上面は黒灰色,のどと後頸(こうけい)は白く,胸から下が赤褐色で,尾に3~4条の横縞がある。後頸の白帯はよく目だつ。腹に黒い横縞がないことから,ほかのホトトギス類と容易に区別できる。アジア東部の温帯から熱帯地方にかけて分布し,北方のものは冬季フィリピンやマレー半島などに渡る。日本には夏鳥として5月中旬ころに渡来し,九州以北のおもに山地の落葉広葉樹林や針広混交林で繁殖する。ほかのホトトギス類と同様に托卵の習性をもち,巣づくりや抱卵,育雛(いくすう)はまったく行わない。托卵の相手はコルリ,オオルリ,ルリビタキなどで,卵はコルリの卵によく似ていて青い。ジュイチー,ジュイチーと大きな声で繰り返し鳴き,最後にジュクジュクという声を入れる。名はこの鳴声からきている。慈悲心とも聞こえ,ジヒシンチョウの別名がある。夜間にも鳴く。
執筆者:樋口 広芳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報