コマドリ(その他表記)Japanese robin
Erithacus akahige

改訂新版 世界大百科事典 「コマドリ」の意味・わかりやすい解説

コマドリ (駒鳥)
Japanese robin
Erithacus akahige

スズメ目ヒタキ科の鳥。英名ロビンrobinという鳥をしばしばコマドリと訳すが,近縁ではあるがまったくの別種である。全長約14cm,いわゆる小型ツグミ類で,体上面と胸は赤褐色,腹は白っぽい。雌のほうが雄よりも淡色日本だけで繁殖し,北海道~九州のほか,利尻島,礼文島,南千島,伊豆諸島,屋久島などの島々にも生息する。秋・冬季,南部の一部のものを除いては南方の温暖な地方へ渡去する。本土および屋久島ではおもに標高1000m以上の山地に生息するが,伊豆諸島や利尻島,礼文島では海岸付近から生息している。よく発達した森林にすみ,地表付近を移動しながら昆虫をとって食べる。つがいで一定範囲のテリトリーを占有して繁殖する。テリトリーの防衛にあたっては,雄はヒンカラカラカラーという美しい声でさえずったり,隣接個体と実際のとっくみ合いをしたりする。こうしたさえずりや争いの際,雄は胸をそらしたり,尾をたてたり扇形におし下げたりして,その赤褐色部分を誇示する。わん形の巣を崖地のくぼみや木の根もとなどにつくる。伊豆諸島で繁殖するものは,地上数mのところにある樹洞も利用する。産卵期は5~7月ころで,美しい青緑色の卵を3~5個産む。抱卵は雌だけが行い,育雛(いくすう)は雄も手伝う。古くから飼鳥として珍重され,飼育家の間ではウグイスオオルリとともに日本の三鳴鳥に入れられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コマドリ」の意味・わかりやすい解説

コマドリ
Erithacus akahige; Japanese robin

スズメ目ヒタキ科。種小名の akahige は原記載者のコンラート・J.テミンクがアカヒゲとコマドリをまちがって命名したもので,アカヒゲの種小名が komadori になっている。繁殖期には「ひん,かららら……」と聞こえる美しい声でさえずり(→さえずり),これがウマのいななきのように聞こえることが駒鳥という和名の由来である。全長 14cm。顔,喉,上胸部は赤褐色,頭上,背,は暗赤褐色,尾は赤褐色。上胸から腹部灰色下腹部は白色。体のわりに脚は長い。日本にのみ繁殖分布し,中国南部に渡って越冬するが,本州中部以南でも少数が越冬している(→渡り鳥)。平地から高山の森林や,山地の深い笹藪などに繁殖する。暗いところを好み,あまり姿は見られない。伊豆七島屋久島に分布する亜種タネコマドリ E. a. tanensis留鳥である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コマドリ」の意味・わかりやすい解説

コマドリ
こまどり / 駒鳥
Japanese robin
[学] Erithacus akahige

鳥綱スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。日本特産種で、九州から北海道にかけて繁殖し、冬は中国南部で過ごす。学名の種小名が同属のアカヒゲE. komadoriと入れ違っているのは、両種を記載したオランダの博物学者テミンクC. J. Temminck(1778―1858)が誤ったものとされる。ヨーロッパ人にもっとも親しまれている鳥の一つで、単にrobinの英名でよばれるヨーロッパコマドリE. rubeculaも同じ属の鳥である。コマドリのさえずりは、全長14センチメートルの小形の鳥にしては声量があり、「ヒンカラカラカラ」と聞こえてウマのいななきに似ているのが和名の由来であるといわれる。江戸時代には勇壮な声だとして武士に好んで飼われ、また、ウグイス、オオルリとともに鳴き声の美しい三名鳥の一つとされて、1970年代まで盛んに飼育された。雄は上面が赤褐色、頭部から胸は橙赤(とうせき)色、腹は汚白色。尾は橙(だいだい)色で、さえずるときには尾を立て、扇のように広げる。

 島で繁殖するものは海岸近くにすむが、本州中部では標高1000~2000メートルの、ササが下草として茂った天然林にすむ。地上に巣をつくり、3~5個の卵を産む。ホトトギス科のジュウイチがしばしばこの巣に托卵(たくらん)する。おもに地上で昆虫を捕食する。

[竹下信雄]

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百科事典マイペディア 「コマドリ」の意味・わかりやすい解説

コマドリ

ヒタキ科の鳥。翼長7.5cm。雄の背面は暗赤褐色,胸は赤い。雌の体色はやや淡い。日本とサハリンで繁殖し,冬は中国南部にまで渡る。亜高山帯のササなどの下ばえの多い林で繁殖し,巣は倒木の下や浅いくぼみに作る。ヒンカララララと大きな声でさえずり,古来三鳴鳥の一つとされた。ヨーロッパ産のヨーロッパコマドリ(ロビン)は本種に似た胸の赤い鳥だが別種。
→関連項目ウグイス(鶯)オオルリコルリノゴマ

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