ジョフロアサンティレール(その他表記)Étienne Geoffroy Saint-Hilaire

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ジョフロア・サンティレール
Étienne Geoffroy Saint-Hilaire
生没年:1772-1844

フランスの比較解剖学者。革命後国立自然史博物館となったジャルダン・デ・プラントの動物学教授に就任し,J.B.deラマルク同僚となった。また後にG.L.C.キュビエを招請した。すべての動物が単一のプランのもとにつくられているとし,各器官の相互の位置が構造的に不変であることを主張した(場所機能の原理)。生物体の諸機能はこうした構造によって規定される。また個々の生物の形態差異は,一部分欠損が他の部分の拡大によって補充されて全体としては均衡を保持している(部分相互補塡の原理)ためだとした。これらは,主著《解剖哲学》(1818)に詳しいが,この考えをめぐって後にキュビエと大論争をした。生物進化に関しては環境の直接作用を主張し,とりわけ呼吸機能を重視することによって,種の変化や絶滅を考察した。また近代的な奇形学の創始者ともいわれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ジョフロア・サン=ティレール
Geoffroy Saint-Hilaire, Étienne

[生]1772.4.15. セーヌエオアーズ,エタンプ
[没]1844.6.19. パリ
フランスの博物学者。1793年パリに新設された国立自然史博物館の教授となり,動物学部長を兼任ナポレオンエジプト遠征(1798~1800)に同行して標本をつくり,母国に持帰った。パリ大学の動物学教授になった(1809)頃から解剖学の研究を行ない,『解剖哲学』Philosophie anatomique(全2巻,1818~22)を著す。あらゆる脊椎動物には一つの原型が存在し,個々の種類の動物の形態は原型が修飾を受けて生じたものという考えに到達し,この理論を無脊椎動物にまで拡張しようと企てて,種の不変性を主張するキュビエに対し,外的要因によって生じる奇形が種の進化を可能にすると説いて科学界を二分する論争を展開した(1830)。論争では,キュビエの業績に太刀打ちできなかったが,C.ダーウィン進化論が受容される素地を準備した点に功績が認められている。失明して退官した(1840)。奇形学の開祖ともされており,息子のイシドール(1805~61)も動物学者で,奇形を対象とした研究を行なった。

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百科事典マイペディア の解説

ジョフロア・サン・ティレール

フランスの博物学者。パリで博物学を研究し,自然史博物館の脊椎動物学教授となる。同僚のラマルクの進化論に理解を示す。ナポレオン1世のエジプト遠征に随行し,多数の標本を持ち帰る。動物界全体はただ一つの基本型(プラン)から変化したと主張し,1830年パリのアカデミーでキュビエと論争。主著に《解剖哲学》(1818年)がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ジョフロア・サンティレール
じょふろあさんてぃれーる

ジョフロア・サンチレール

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世界大百科事典(旧版)内のジョフロアサンティレールの言及

【形態学】より

…通俗的には,生物のからだの全体または部分のもつ形態や構造の研究を指すが,厳密には,発育や進化による生成過程も含めて形態・構造を論ずる生物学の一分野のこと。いいかえれば,個体および個体以下のレベルでおこる生命現象のうち視覚的にとらえられるものを対象とするのが形態学であるが,対象物のレベルや研究目標によっていくつかに類別することができる。 ある一種の生物についてこのような研究がなされる場合は,多少とも生理的機能との関連があるため生理形態学ともよばれ,解剖学組織学細胞学発生学などがこれに含まれる。…

【動物行動学】より

…動物の行動を研究する生物学の一分野。エソロジーとそのまま呼ばれることもあり,習性学,行動生物学,比較行動学,行動学などと記される場合もある。エソロジーということばは,I.ジョフロア・サンティレールが1859年に〈本能,習性など生物の表す行動と環境の関係を研究する学問〉として提唱したのに始まる(ただしこのことば自体は,それ以前にJ.S.ミルが〈人生学〉という意味合いで使っていた)。以後,さまざまな曲折を経るが,現在では〈ダーウィン以後の近代生物学のあらゆる手法を用いて動物の行動を研究する学問〉(K.ローレンツ)というのが,最も広く受け入れられている定義である。…

※「ジョフロアサンティレール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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