レチタティーボ(読み)れちたてぃーぼ(英語表記)recitativo イタリア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レチタティーボ」の意味・わかりやすい解説

レチタティーボ
れちたてぃーぼ
recitativo イタリア語

叙唱」と訳される。オペラオラトリオ歌曲などで、ことばの自然なリズムやアクセントを生かし、語るように歌われる部分。それだけが独立した楽曲をつくることはなく、かならずアリアなどに結び付く。一定の形式はない。作曲家が音程、リズム、テンポなどを記譜した場合でも、歌手はこれを守る必要はなく、かなり自由に歌ってもよい。通奏低音伴奏によるレチタティーボセッコrecitativo seccoと管弦楽伴奏によるレチタティーボ・アッコンパニャートrecitativo accompagnatoに分類できる。アリアとの関係ではレチタティーボで物語などの状況を説明、アリアで感情を表現するという役割分担がある。

 グレゴリオ聖歌詩編朗唱もレチタティーボの一例であるが、レチタティーボが重要な技法となるのは17世紀初頭のオペラからである。そこでは初め台詞(せりふ)はすべて朗唱風に作曲されたが、やがてその一部がアリアになってゆくにしたがい、レチタティーボは前述した形式へと向かう。19世紀後半ワーグナーがレチタティーボとアリアの区別を排し、無限旋律楽劇中心に置いたことにより、レチタティーボは姿を消していった。

[石多正男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レチタティーボ」の意味・わかりやすい解説

レチタティーボ
recitativo

音楽用語。オペラ,オラトリオ,カンタータなどにおけるアリアに対する声楽様式で,「叙唱」と訳される。アリアが旋律的表現を主体とするのに対し,「語り」に重点がおかれる。オペラなどではレチタティーボで状況が話法体で語られ,次のアリアは,感情表現の場となる。叙述的性格のため,歌詞シラブルに基づいた短い音符群から成る。通常,通奏低音のみによって伴奏されるレチタティーボ・セッコと,器楽伴奏付きのレチタティーボ・アコンパニャートに分類される。

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