日本大百科全書(ニッポニカ) 「スエズ」の意味・わかりやすい解説
スエズ
すえず
Suez
エジプト北東部の港湾都市。スエズ運河南端、紅海側入口に位置する。人口41万7527(1996)。古くから紅海と地中海やナイル地方とを結ぶ要地として栄え、7世紀以降はメッカへの巡礼団の出航地ともなった。喜望峰航路の発展で一時衰えたが、19世紀イギリスがここをインド貿易の拠点としてカイロと結ぶ鉄道を建設し、1869年スエズ運河の完成により港湾都市として発展した。近年スエズ湾沿岸や海底油田の開発で国産石油の集散地となり、火力発電所や石油精製、化学肥料、繊維などの工場建設が進み、工業都市として発展している。カイロへはパイプラインが通じている。市街は本土側と、運河建設の際の土砂で築かれた島にあるポート・タウフィクとからなり、両者は長さ2.7キロメートルの鉄道・道路の走る堤防で結ばれている。ポート・タウフィクの運河通りの展望台からスエズ運河が一望できる。古代からアラブ時代までの遺物を所蔵する博物館がある。
[藤井宏志]