ステシコロス(読み)すてしころす(英語表記)Stēsichoros

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ステシコロス」の意味・わかりやすい解説

ステシコロス
Stēsichoros

[生]前640頃.マタウロス
[没]前555頃.シチリア島,カタナ
ギリシアの抒情詩人。シチリア島のヒメラで活躍。本名は Teisiāsで,ステシコロスは合唱隊指導者の意味の号であるといわれる。伝説によると,彼はその作品『ヘレネHelenēによってヘレネを誹謗したために盲目になり,取消しの歌において,パリストロイかどわかして連れていったのは本物のヘレネではなく彼女の幻だったと歌って,視力を回復したという。多種多様の抒情詩を作ったが,特に合唱隊のための物語風の英雄賛歌の作者として名高く,叙事詩の壮大さを抒情詩に取入れて,のちの悲劇の発達に貢献した。作品は断片 50行ほどしか残っていない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステシコロス」の意味・わかりやすい解説

ステシコロス
すてしころす
Stēsichoros

生没年未詳。古代ギリシアの叙情詩人。紀元前7世紀後半から前6世紀後半の人。シチリア島の出身。本名はテイシアスであったといい、合唱叙情詩をジャンルとして確立した功績によって、ステシコロス(「合唱隊の設置者」の意)とよばれたという。作品はわずかな断片しか伝わらない。神話伝説に基づくスケールの大きい物語性が特色で、ロマンチックな恋物語もあり、神話や伝説が自由に改変されているという。トロイのヘレネを作中で非難して神罰のため盲目となり、「取り消しの歌」をつくって視力をふたたび与えられたという伝説は、このことをよく示している。

[伊藤照夫]

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