日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステッド」の意味・わかりやすい解説
ステッド
すてっど
Christina Stead
(1902―1983)
オーストラリアの小説家。シドニー・ロックディル生まれ。1921年、シドニー・ティーチャーズ・カレッジ卒業。教員、秘書ほか諸種の仕事につく。28年「旅に出たいがため」離国。ロンドンで会社員。窮乏生活から病を得、「分身をこの世に残したい」衝動を覚え、のちに傑作と評されている『シドニーの七人の貧しい男たち』(出版は1934)を書いたとされる。この間経済学者、小説家と多才なW・ブレイクと結婚、1929~30年はパリ。パリでの銀行勤めの経験が、『世界の中の家』(1938)などに結実。1937~47年アメリカへ移住。処女出版作『ザルツブルグ物語』(1934)から、帰豪後書いた最後の作品となる『ミス・ハーバート(郊外の妻)』(1976)まで、10編余の小説は各国で刊行。しかし、1965年まで、これらの作品がオーストラリアで出版されることはなかった。オーストラリアでの少女期の経験を基にした『子供たちを愛した男』(1940)や『愛のみに』(1944)が広く地元オーストラリアの読者を得たのは、アメリカの詩人R・ジャレルらの熱意による。夫の死(1968)後、1969年に41年ぶりに一時帰豪。74年より定住。アメリカ在住期、文芸誌への寄稿の短編は『頭の混乱した少女』として1968年出版。未刊の短編は『オーシャン・オブ・ストーリー』のタイトルで没後1986年出版。ビクトリア州プレミア賞受賞。1967年大英百科事典賞は「オーストラリアの作家ではない」との理由で授与されなかったが、1974年、パトリック・ホワイト賞の最初の受賞者となって、オーストラリア作家と認められた。
[古宇田敦子]