投書(読み)トウショ

デジタル大辞泉 「投書」の意味・読み・例文・類語

とう‐しょ【投書】

[名](スル)
意見・希望・苦情などの書状を関係機関などに送ること。また、その書状。「役所投書する」
投稿」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「投書」の意味・読み・例文・類語

とう‐しょ【投書】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 書状をなげこむこと。
    1. [初出の実例]「銗とは受投書之器、入ては不出様にするぞ」(出典:史記抄(1477)一六)
    2. [その他の文献]〔魏志‐国淵伝〕
  3. 新聞雑誌などに掲載してもらうため、文芸の原稿や論文、日常の雑感などを送ること。また、その原稿。投稿。
    1. [初出の実例]「投書(トウショ)々々と名斗(なばか)り投書(トウショ)(でる)が少なく没書が余計」(出典:団団珍聞‐六九三号(1889))
  4. 意見、苦情、希望などを書いて新聞・雑誌・ラジオなどの報道関係、公の機関などに送りつけること。
    1. [初出の実例]「うたふべき旨を奉行所に申断り、中に投書すべし」(出典:徳川実紀‐享保六年(1721)閏七月)

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改訂新版 世界大百科事典 「投書」の意味・わかりやすい解説

投書 (とうしょ)

読者が自分の意見,感想などを手紙はがきその他で新聞,雑誌などマス・メディアへ書き送ることをいう。身上相談俳句詩歌などは投稿といわれ,投書と区別されることが多い。また電話による意見,感想の伝達は投書とはいわない。欧米では投書はきわめて盛んである。幅広い階層の人々がさまざまな問題について自己の所見を投書し,マス・メディア側でも積極的に掲載する。とくにクオリティ・ペーパー(高級紙)の投書欄は,その国の各界指導者層の討論の場で,議会制民主主義を補完する機能をもっている。また新聞社,出版社側でも,投書を〈編集者への手紙〉と呼んでおり,投書欄の充実に努めるとともに,投書を通じて得た意見を参考にして紙面改良に努めている。旧ソ連,中国などの社会主義国でも,投書が新聞,雑誌をにぎわせてきたものの,その投書の取捨選択は党や政府の方針に沿ってなされてきた。

 日本では投書は1960年代のベトナム問題,公害問題などを契機に,かなり活発となってきた。新聞紙上には学生,会社員,主婦などの投書がしばしば登場するが,そこには欧米ほどの幅広さがない。とくに知識人の投書が少ない。ところが明治初期には知識人読者の投書が新聞紙上を〈闊歩〉していた。ことに大新聞(おおしんぶん)(大新聞・小新聞)では,投書家が論説記者と共同して論陣を組み,政治論戦に参加していた。また小新聞(こしんぶん)でも投書家のために大きくスペースを割いていた。明治初期では有力な投書家が記者としてスカウトされることが珍しくなく,投書家から政治家,文学者などが輩出した。この当時の盛んな投書ブームは,《穎才(えいさい)新誌》(1877創刊)に代表される投書雑誌を生んだ。明治30年代前半には,はがき投書が流行した。1枚のはがきに各階層の読者が公憤や私憤をあらわし,《文庫》(1895創刊)に代表される投書雑誌も隆盛であった。しかし投書は新聞の企業化とともに衰退していく。新聞は記事や広告のためにスペースをできるだけ割く一方,投書欄の縮小を図るようになる。日露講和問題,米騒動などの時期に投書は一時的に盛上がりをみせたが,しだいに歓迎されざるものとなる。ことにファシズムの台頭した1930年代,40年代には,ほとんどの新聞から投書欄が消えた。また投書雑誌も廃刊し,一般雑誌の投書欄もさびしくなった。第2次大戦の敗戦とともに,新聞,雑誌に投書が復活した。

 投書欄は読者の紙面参加の場である。新聞,雑誌の送ってくる情報の単なる〈受け手〉にすぎない現在の読者が,投書を媒介にしてジャーナリズムに参加し,世論に訴えることができる唯一の場が投書欄といってよい。しかし特定の読者しか投書しないとき,また投書が媒体の発行者によって恣意的に選択されるときには,投書は十分な社会的機能を果たさなくなる。幅広い階層からの多様な意見が世論の正確な縮図となって投影されることが望ましい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「投書」の意味・わかりやすい解説

投書
とうしょ

政治の動きや社会的事件について読者が自分の意見、感想、希望、苦情を述べたり、社会の不合理な仕組みについての疑問をただしたりする文書を、新聞、雑誌などマス・メディアへ送ること。またはその文書。古代中国で他人を誹謗(ひぼう)する文書をその家へ投げ込んだことから、このことばがおこったともいう(時有投書誹謗者、太祖疾之、欲必知其主『三国志』「魏(ぎ)書国淵伝」)。俳句、短歌、創作などの原稿を送ることは投稿とよび、投書と区別している。わが国では新聞、雑誌が発達し始めた明治初期から知識人による投書が盛んに行われ、紙上で政治論争が活発に展開された。しかし、明治後期以後、新聞の企業化が進むにつれ投書欄はしだいに縮小、ことに1930~40年代のファシズムの台頭から戦時にかけ投書欄は影を潜めた。第二次世界大戦後、民主主義時代の到来とともに投書は復活し、マス・メディア側も投書欄の拡充に努めるようになった。投書は、マス・メディアの報道を一方的に受けるだけの現在の読者が、紙上でジャーナリズムに参加し、世論に訴えかけることのできる双方向コミュニケーションの手段であり、民主主義社会の重要な機能を担っている。したがって、投書が特定の投書家によって占められたり、メディア側の恣意(しい)によって選択、掲載されるようなときは、その社会的機能が十分に果たされないことになる。

 欧米では投書活動が活発で、幅広い階層の人々が、さまざまな問題について投書し、メディア側も投書を「編集者への手紙」とよんで歓迎するとともに、それらの意見、感想、希望を紙面改良の参考に役だてている。18世紀後半、イギリスの『パブリック・アドバタイザー』The Public Advertiserに掲載された「ジュニアス・レターズ」とよばれる匿名の投書は、当時の支配層を批判して有名となった。

[高須正郎]

『影山三郎著『新聞投書論』(1968・現代ジャーナリズム出版会)』『山本武利著『近代日本の新聞読者層』(1981・法政大学出版局)』

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普及版 字通 「投書」の読み・字形・画数・意味

【投書】とうしよ

書を送りつける。〔三国志、魏、国淵伝〕時に投書して誹謗するり。太(曹操)之れを疾(にく)み、必ず其のを知らんと欲す。淵、うて其の本書を留め、宣露せず。

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