知恵蔵 の解説
ステファン・ウィリアム・ホーキング
1988年、後に世界17カ国以上で訳されベストセラーとなる代表作、『A BRIEF HISTORY OF TIME』を上梓。日本では、訳本が89年6月に『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』と題して発行され、宇宙論ブームを起こす。同書を発行した早川書房は、物理学系の出版は初めてでありながら、ベストセラーを見込んで一般向け科学書としては異例の初版3万部を発行した。本書では、宇宙の始まりであるビッグバンやブラックホールにおける特異点の研究、量子力学と一般相対性理論を駆使したブラックホールの蒸発説など、理論物理学者としての先鋭的な業績を専門外の読者にも分かりやすく説いている。その後も、多くの一般向け及び子ども向けの宇宙論に関する本を執筆している。
21歳のとき筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断される。これは運動神経の変性により筋肉の萎縮と筋力低下をきたす疾患で、原因や根本治療はまだ得られていない。一般的には進行が極めて速く、人工呼吸器を使わない場合、多くが発症後2年から5年で呼吸筋まひにより死に至るが、中には人工呼吸器を使わないでも十数年にわたってゆっくりと症状が進行するケースもあり、ホーキングの症状もこれに当たる。
95年、自身の24時間看護を担当していた看護師のエレイン・メイソンと再婚。エレインの前夫はホーキングの人工音声器を設計した技師。
2001年、 東京大学安田講堂にて一般講演を行う。
12年8月29日夜(日本時間30日未明)、ロンドンの五輪スタジアムで行われた第14回夏季パラリンピック・ロンドン大会の開会式に出席し、障害者の可能性についてスピーチして話題となった。
(葛西奈津子 フリーランスライター / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報