ブレッソン(読み)ぶれっそん(その他表記)Robert Bresson

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブレッソン」の意味・わかりやすい解説

ブレッソン(Robert Bresson)
ぶれっそん
Robert Bresson
(1901―1999)

フランス映画監督。フランス中部のピュイ・ド・ドーム県ブロモン・ラモット生まれ。最初は画家を志すが、1934年に短編『公共問題』を初監督、ルネ・クレールらの作品脚本などで協力したが、第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となり、1年以上の収容所生活を送る。帰国後、長編第一作『罪の天使たち』(1943)と『ブーローニュの森の貴婦人たち』(1945)を発表して注目を浴び、さらに『田舎(いなか)司祭日記』(1950)で若い司祭の内面的苦悩を透徹したスタイルで描いて、世界に名を知らしめる。その後、贖罪(しょくざい)といった人間の根源的宇宙を描きながら、職業俳優の排除、抑制された感情表現、選び抜かれた映像と音の調和など、そのスタイルを世界に類のないほど厳格なものにしていき、自分の映画を演劇的な影響の強い他の映画と区別してシネマトグラフと定義するまでになる。『抵抗(レジスタンス) 死刑囚手記より』(1956)、『スリ』(1959)、『少女ムシェット』(1967)、『やさしい女』(1969)、『白夜』(1971)、『ラルジャン』(1983)など、生涯で14作品と寡作ながら高い評価を受け、その多くが国内外の映画祭で受賞している。

[村山匡一郎]

資料 監督作品一覧

公共問題 Les affaires publiques(1934)
罪の天使たち Les anges du péché(1943)
ブローニュの森の貴婦人たち Les dames du Bois de Boulogne(1944)
田舎司祭の日記 Journal d'un curé de campagne(1951)
抵抗 死刑囚の手記より  Un condamné à mort s'est échappé ou le vent souffle où il veut(1956)
スリ Pickpocket(1959)
ジャンヌ・ダルク裁判 Procès de Jeanne d'Arc(1962)
バルタザールどこへ行く Au hasard Balthazar(1964)
少女ムシェット Mouchette(1967)
やさしい女 Une femme douce(1969)
白夜 Quatre nuits d'un rêveur(1971)
湖のランスロ Lancelot du Lac(1974)
たぶん悪魔が Le diable probablement(1977)
ラルジャン L'argent(1983)

『ポール・シュレイダー著、山本喜久男訳『聖なる映画 小津・ブレッソン・ドライヤー』(1981・フィルムアート社)』『ロベール・ブレッソン著、松浦寿輝訳『シネマトグラフ覚書』(1987・筑摩書房)』『浅沼圭司著『ロベール・ブレッソン研究』(1999・水声社)』『『ロベール・ブレッソンの映画』(1999・財団法人東京国際映像文化振興会)』


ブレッソン(Henri Cartier-Bresson)
ぶれっそん

フランスの写真家。正しくはカルチエ・ブレッソン。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブレッソン」の意味・わかりやすい解説

ブレッソン
Bresson, Robert

[生]1907.9.25. フランス,ピュイドドーム,ブロモンラモト
[没]1999.12.18. フランス,ウールエロアール
フランスの映画監督。ルネ・クレールの助監督を経て,長編第1作『罪の天使たち』Les Anges du péché (1943) を発表。寡作であったが,端正なフォルムによる映像美の追究により孤高の作家として高い評価を受けた。おもな作品として『田舎司祭の日記』Le Journal d'un curé de campagne (50) ,『抵抗』Un Condamné à mort s'est échappé (56,カンヌ国際映画祭監督賞) ,『バルタザールどこへ行く』Au hasard Balthazar (66) などがある。

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百科事典マイペディア 「ブレッソン」の意味・わかりやすい解説

ブレッソン

フランスの映画監督。処女作《罪の天使》(1943年)以来,G.ベルナノス原作の《田舎司祭の日記》(1950年),《抵抗》(1956年),《スリ》(1959年),《バルタザールどこへ行く》(1964年),《白夜》(1971年),《ラルジャン》(1983年)等を発表。職業俳優をほとんど使わず,虚飾のない純粋視覚の表現を探求した作品で,ヌーベル・バーグの先駆となった。

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