スベリヒユ(英語表記)(common) pursulane
Portulaca oleracea L.

改訂新版 世界大百科事典 「スベリヒユ」の意味・わかりやすい解説

スベリヒユ
(common) pursulane
Portulaca oleracea L.

茎や葉は多肉質で光沢のあるスベリヒユ科一年草。茎は地面をはうようによく分枝するが,ときにはやや立ちあがり,高さ30~50cmにもなる。円柱状で軟質,多肉で紫赤褐色になり,葉をやや対生状につける。葉は倒卵形,先はやや凹頭になり,葉の表面は深緑色,裏は紅色を帯び,長さ1~3cm,基部は短い葉柄状になる。花は黄色で小型,枝の先端部の葉腋(ようえき)に生じ,花弁は5枚,子房は半下位。熱帯では周年,温帯では夏期に開花する。果実には光沢のある黒色種子を多数生じる。南アメリカの熱帯が原産地であるが,現在は全世界の熱帯から温帯にかけて広く分布し,耕地雑草になる。多肉なため除草が難しい。しかし,軟らかい茎や葉は野菜として広く利用されており,ヨーロッパでは栽培変種のタチスベリヒユvar.sativa DC.(英名kitchen garden)が育成された。名のように茎は立ち,高さ50cmにはなる。また花が大型(径2.5cm以上)になる観賞用のオオスベリヒユvar.gigantea Baileyもときに栽培される。全草を乾かしたものを中国では馬歯莞と呼び解熱などに用いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スベリヒユ」の意味・わかりやすい解説

スベリヒユ
すべりひゆ / 滑莧
[学] Portulaca oleracea L.

スベリヒユ科(APG分類:スベリヒユ科)の一年草。全体に肉質で、毛はない。茎は紅色を帯び、下部は地をはい、上部は分枝して高さ15~30センチメートル。葉は互生し、倒卵状楕円(だえん)形で長さ1~2.5センチメートル、先は円く、基部はくさび形で短柄となる。6~9月、枝先の束生葉4、5枚の中に、黄色の小花を3~5個開く。基部に2枚の包葉があり、花被片(かひへん)は5枚、倒卵形で先端はくぼみ、雄しべ7~12本。果実は蓋果(がいか)で膜質、種子は黒色で多数。全世界の温帯、熱帯に広く分布する。茎や葉は食用とする。

[小林純子 2021年2月17日]

文化史

史前帰化植物の一つ。『万葉集』のいはゐづら(伊波為都良、14巻3378、3416)をスベリヒユとする見方がある(別説ではジュンサイ)。中国、インド、ヨーロッパなどでは野菜で、インドやヨーロッパには改良された栽培品種がある。ヨーロッパのタチスベリヒユ(オオスベリヒユ)P. oleracea L. var. sativa DC.は茎が立ち、大形で、高さ30~50センチメートル、葉の長さ4センチメートルにもなり、茎葉をサラダにするか、煮て食べる。

[湯浅浩史 2021年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スベリヒユ」の意味・わかりやすい解説

スベリヒユ(滑ひゆ)
スベリヒユ
Portulaca oleracea; purslane

スベリヒユ科の一年草。日当りのよい畑地や路傍などにごく普通に生える雑草で,広く全世界に分布する。茎は長さ約 20cm,分枝して地面に広がり,あるいは斜めに立上がり紫赤色で肉質,断面は丸い。葉は普通対生し長楕円形,長さ1~2cmで肉が厚い。夏から秋にかけて,枝の先に黄色5弁の小花が数個ずつ固まって咲く。果実が熟すると上半分が帽子のようにとれて中から細かい種子が出る。若い草をゆでてあえ物や浸し物にして食べる。和名は茎葉をつぶすと,ぬるぬる滑ることによる。園芸植物マツバボタンは同属近縁の植物である。

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百科事典マイペディア 「スベリヒユ」の意味・わかりやすい解説

スベリヒユ

スベリヒユ科の一年草。ほとんど全世界の温〜熱帯に分布し,平地の日当りにはえる。耕地雑草の一つ。全草肉質で紫赤色を帯び,茎は長さ20cm内外,枝分れして地面をはい,くさび形の葉をつける。7〜8月枝先に黄色の5弁花をつける。花は径1cmほど,日光が当たると開く。果実は熟すと上半分が帽子状に離れ,種子を散らす。茎や葉は食べられる。

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