スポットspotは現物,現場などを意味し,将来の一定の時期に売買対象となる商品の受渡しをする先物市場に対し,売買契約と同時に現物の受渡しをする市場をいう。また原油,石油製品などでは長期契約と区別して当座必要な分を手当てする当用買いをスポットと呼び,その市場をスポット市場という。長期契約では価格はあらかじめ,売手と買手の先行きの需給予測に基づいて決められるが,とくに売手の市場支配力が強い場合にはその価格は硬直的になりがちである。これに対しスポット市場ではその時々の需給を敏感に反映して取引される結果,スポット価格が硬直的な長期契約価格の改定を促すきっかけになる。1973年10月6日勃発した第4次中東戦争をきっかけに,それまでメジャーと呼ばれる巨大国際石油資本と話し合って決められていた原油価格は,中東産油国を中心とするOPEC(石油輸出国機構)が一方的に通告する決定方式に移り,いわゆる石油危機が発生した。この間,いったん産油国の手を離れた原油が需給に応じて転売される量が徐々に増え,原油のスポット市場が形成されていった。ロッテルダム,ロンドン,ニューヨークなどがその代表例である。また石油製品も各消費国でスポット市場が拡大した。83年3月,OPECが結成以来初めて原油値下げに踏み切ったのは,需給緩和を織り込んだスポット市場におけるスポット価格の動向を追認したものといえる。
執筆者:米良 周
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