日本大百科全書(ニッポニカ) 「スムート」の意味・わかりやすい解説
スムート
すむーと
George F. Smoot
(1945― )
アメリカの物理学者。マサチューセッツ工科大学卒業。1970年素粒子に関する研究で物理学の博士号を取得。カルフォルニア大学バークリー校物理学教授。宇宙マイクロ波背景放射の黒体性と異方性を発見した功績が認められ、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのマザーとともに2006年にノーベル物理学賞を受賞した。
二人は1989年にNASAが打ち上げた科学人工衛星COBE(コービー)(宇宙背景放射探査機)で宇宙マイクロ波背景放射(CMB)とよばれる宇宙創生期の熱の名残(なご)りを精密に観測した。その結果、宇宙背景放射が絶対温度2.7K(-270.4℃)であることや、この温度の分布には方向によってわずかにゆらぎがあることを明らかにした。
COBEのプロジェクトは1000人を超える研究者、技術者で編成されていた。背景放射の微細なゆらぎの観測の責任者を務め、熱の分布にむらがあることを10万分の1の精度で検出してビッグ・バン理論を裏づけた。
この事実を示すグラフが学会で紹介されたときから「宇宙論は思索に基づくものではなくなり科学となった」と語り、「ビッグ・バンによって急速に膨張したインフレーション理論を確認した」と語っていた。
[馬場錬成]