日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
センチメンタル・ジャーニー
せんちめんたるじゃーにー
A Sentimental Journey through France and Italy
イギリスの作家L・スターンの紀行文。1768年刊。肺患と闘いつつ執筆を続けた著者が、病を養うためもあって、1762年以来何度かフランスに旅をした間の見聞に材を求めた紀行の形式だが、各地の地理、歴史や自然の風物などにはほとんど触れず、行きずりの美女に心をときめかせたり、路傍のロバの死骸(しがい)に涙を注いだり、もっぱら著者自身の心の動きを叙することに終始している。四巻の予定が、著者死去のため二巻だけで終わり、原題名に掲げたイタリアのことは全然出てこない。惻々(そくそく)と人の心を動かす趣(おもむき)があり、独特の風格のゆえにフランスその他でも愛読された。
[朱牟田夏雄]
『松村達雄訳『センチメンタル・ジャーニー』(岩波文庫)』