タマニーホール(英語表記)Tammany Hall

翻訳|Tammany Hall

改訂新版 世界大百科事典 「タマニーホール」の意味・わかりやすい解説

タマニー・ホール
Tammany Hall

1789年,アメリカのニューヨーク市において一種の慈善団体として設立されたタマニー協会起源をもつ政党機関。本部の置かれた会館にちなんでタマニー・ホールと呼ばれた。1800年の大統領選挙でアロン・バーが民主党の機関として利用してからは,市政背後から操縦する民主党のマシーンのことを指すようになった。タマニーの語源は,植民地時代のデラウェアにおけるインディアン一族の首長の名に由来し,彼はセント・タマニーと称されていた。独立革命期には,その名称が愛国派のグループ名にも用いられるようになって一般化する。

 タマニー・ホールが都市の政党機関として著名になるのは,1860年代以降,大量の移民到来に伴いタマニーのボスたちが職を世話し,移民票を買収操作することで,市政を支配するようになってからである。その代表的な政治家はトウィードWilliam Marcy Tweed(1823-78)である。しかし世紀の転換期において,市政改革運動の影響をうけて体質改善をせまられ,以後はかつてのような支配力を失った。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマニーホール」の意味・わかりやすい解説

タマニー・ホール
たまにーほーる
Tammany Hall

ニューヨーク市政を支配したボス機構の俗称。伝説上のインディアンの名をとった友愛団体、タマニー協会として建国期に生まれた。のちにリパブリカン党のアーロン・バー派と結び付いて政治集団化し、連邦党員は脱会した。その後この派閥は1812年にタマニー・ホールを建ててその本拠とし、ジャクソン時代には民主党形成の担い手となり、以後約100年間ニューヨーク市政を牛耳(ぎゅうじ)った。1850年代以降、とくに南北戦争直後の「ボス・ツイード」の時代の腐敗政治は悪名高いが、下層移民集団の利害を代弁する側面もあった。70年代以降はアイルランド人ボスが支配し、20世紀には社会福祉政策を推進するようになり、そのなかからアルスミスやロバート・ワグナーを連邦政治に送り込んだ。しかしニューディール期にイタリア系共和党員ラガーディアに市長職を奪われて以後急激に衰退し、1960年代にはユニオン・スクエアにあった本拠のタマニー・ホールの建物までが売りに出された。

[安武秀岳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タマニーホール」の意味・わかりやすい解説

タマニー・ホール
Tammany Hall

アメリカ合衆国,ニューヨーク市の民主党執行委員会の俗称。ニューヨーク郡または市の民主党の組織をさすこともある。 1789年に,民主的な主義と行動,土着の精神をもつ国家的団体がアメリカインディアンの名称をとって聖タマニー協会として創設され,その後約 30年間,中産階級を代表して活躍した。 1805年にタマニー協会は社交団体と政治団体に分れ,新たに民主党がつくられたが,政治は協会のボスたちの統制下にあり,68年には会長の W.ツイードが市政を支配し,汚職により富を蓄積したためタマニーはボス政治の汚職の別語とされるほどであった。その後しばしばタマニー再生の計画があったが,1950年に E.インペリテリがタマニーとは別に立候補してタマニーの組織を決定的に打ち破った。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「タマニーホール」の解説

タマニー・ホール
Tammany Hall

ニューヨーク市の民主党執行部の通称で,典型的なボス政治を行った。流入する移民への職の世話,貧民への施しによって票を集め,19世紀後半から20世紀初頭にかけて市政に大きな影響力をふるった。特に,トウィードがボスだった時代は利権政治,買収,汚職をはびこらせて,ボス政治,腐敗した都市政治の代名詞となる。しかし移民法の改正や市政改革運動の進展により,影響力に陰りをみせるに至る。

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百科事典マイペディア 「タマニーホール」の意味・わかりやすい解説

タマニー・ホール

1800年ころから1930年代までニューヨーク市政を支配したボス機構,タマニー協会(1789年創立)の本部。同協会は移民などの選挙権獲得運動を武器に民主党と結び,その下部組織と化して下層大衆を組織的に動かした。そのためタマニー・ホールはボス政治と汚職の代名詞となった。

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