タンギー(読み)たんぎー(英語表記)Yve Tanguy

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンギー」の意味・わかりやすい解説

タンギー
たんぎー
Yve Tanguy
(1900―1955)

フランス出身の画家シュルレアリスムを代表する一人。1月5日パリに生まれ、幼年期をブルターニュ地方で過ごし、10代で船員として各地を航海した。その後、兵役を終えて1924年にパリに出るが、画廊で偶然目にしたデ・キリコ形而上(けいじじょう)絵画に衝撃を受け、独学で絵画の道を志した。シュルレアリスムの芸術家との交流を深め、27年に最初の個展をパリで開いて、この運動の一翼を担う有力メンバーとなった。砂漠か海底を連想させる茫洋(ぼうよう)たる無限空間に、奇異な物体が投げ出されて地表に濃い影を投げる幻想的作風を展開した。風化した骨か貝殻の化石に似て有機的な形態をもつこの物体は、現実との対応をもたず、荒涼とした内面心象風景のなかで増殖を続ける。39年アメリカに移住、42年には市民権を得てこの地の前衛芸術家に影響を与えたが、55年1月15日、最後の大作『孤の増殖』を残してコネティカット州ウッドベリーで没した。

[石崎浩一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タンギー」の意味・わかりやすい解説

タンギー
Tanguy, Yves

[生]1900.1.5. パリ
[没]1955.1.15. コネティカット
フランス生れのアメリカの画家。海軍軍人の子に生れ,商船乗組員として各国を回っていたが,パリの画廊で G.キリコの作品を見て感銘し,独学で絵を修得した。 1925年シュルレアリスムのグループに入って活躍。化石の群れを思わせる物体を砂漠や深海に置いたような不可思議な空間を描いた。 39年第2次世界大戦を避けてアメリカに移住,48年国籍を得た。夫人はシュルレアリストのケイセージ。主要作品『弧の増殖』 (1954,ニューヨーク近代美術館) など。

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