粉粒と水(一般には液体)からなる半固形状分散系に対し,急に外力を加えて変形するとき,表面付近の水が内部に吸収され,体積が膨張して固くなる現象.たとえば,海岸の波打ちぎわのぬれた砂を踏むと,水が吸い込まれて乾いたように見えることがある.O. Reynoldsはこの現象を“膨らむ”(dilate)という意味でダイラタンシーとよんだ.この現象は,密閉容器で外圧を加えただけでは起こらない.比較的小さい固い粒子で,大きさがそろっている粉粒体の間で起こりやすい.これは,静置時には粉粒が比較的密な空間構造をとっていたものが,変形により空げきの大きい構造にかわり,このなかに液体が吸い込まれるためである.生のデンプンに少量の水を加えてかきまぜようとすると,大きな抵抗を示して水が吸い込まれ,割れ目を見ることがあるが,かきまぜるのを止めて容器を傾けると,容易に流動するのもこの種の現象である.そのほか,高分子溶液で,流動速度を増すに従って抵抗が増大する場合にも,ダイラタントであるということがある.このとき,必ずしも体積膨張が起こっているとは限らない.これを流動学的ダイラタンシーとよび,前述の場合を体積的ダイラタンシーとよぶことがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…高分子物質の溶液も理想的な粘性流動とは異なる挙動(非ニュートン流動)を示す。
[チキソトロピーとダイラタンシー]
静置状態では流動性をもたないゼリー状の物質に外力を加えると流動性を示し,さらに静置すれば元に戻ることがある。これは何回でも繰り返せる。…
※「ダイラタンシー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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