翻訳|El Dorado
16世紀スペイン人コンキスタドールが,新大陸に実在すると信じ,熱心に探し求めた伝説上の黄金の国。黄金郷と訳す。この伝説はボゴタのチブチャ族の首長が年に1度グワタビタ湖の霊に供物をささげ,体中に金粉を塗って沐浴するという儀式に発し,スペイン人がそれを歪曲・誇張して作り上げたものとされる。エル・ドラドを求めて数多くの遠征隊が組織されたが,とりわけ有名なのはケサダGonzalo Jiméns de Quesada(1500?-79)麾下の北方(サンタ・マルタ)からの遠征隊,ベナルカサルSebastián de Benalcázar(1480-1551)指揮のキトからの遠征隊とドイツ人フェーダーマンNicolaus Federmann(1501-42)が率いたベネズエラからの遠征隊である。ケサダはマグダレナ川流域を遡行し,チブチャ族を征服してサンタ・フェ・デ・ボゴタを建設した(1538)。その後,他の二つの遠征隊もボゴタに到着した(1539年2月?)。エル・ドラドをはじめ〈シボラの七都〉や〈青春の泉〉などの伝説は,スペイン人コンキスタドールの探検の重要な動因となり,その結果,新大陸の実態が明らかになっていった。なお文学作品としては,E.A.ポーの《エル・ドラド》があり,ボルテールは《カンディード》で,唯一最善の国としてエル・ドラドを描いている。
執筆者:染田 秀藤
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南アメリカにある伝説上の黄金郷。本来は「黄金を塗った男」の意味で、現在のコロンビアの首都ボゴタ北東にあるグアタビタ湖畔に居住していた先住民チブチャ人の首長(しゅちょう)をさした。金粉を全身に塗り込んだ首長は司祭を伴って湖に舟を出し、金銀、宝石を湖中に投げ、身を沈めると、金粉が広がって湖面が輝くという荘厳な儀式のようすが、スペイン人征服者の間に語り継がれた。これにより黄金郷伝説が広がり、そのもっとも有力な場所としてオリノコ、アマゾン両川源流の盆地説が生まれた。1531年スペイン人オルダスがオリノコ川の奥地で黄金郷のうわさを耳にしたのをはじめ、フェーデルマン(1537)や、ベナルカサル(1538)らが探査に乗り出した。なかでもヒメネス・デ・ケサダGonzalo Jiménez de Quesada(1495―1579)の大遠征隊が、コロンビア北岸に河口をもつマグダレナ川をさかのぼり、グアタビタ湖に到達したが、エル・ドラドを発見することはできなかった。しかし類似の秘境の存在を信じる者が後を絶たず、第二、第三の伝説を手掛りに黄金郷の探査熱は18世紀末まで続いた。
[寿里順平]
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…大航海時代が始まって大西洋を西へ渡るヨーロッパ人のエネルギーの根底には,その種の古い楽園願望が強く作用していたと考えるべきである。スペイン人が南アメリカに求めたエル・ドラド(黄金郷)は楽園の変型であったろう。北アメリカ大陸の初期の英仏植民地(ルイジアナ,フロリダ,バージニアなど)は,それぞれ〈地上のエデン〉と認識され,また宣伝された。…
※「エルドラド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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