日本大百科全書(ニッポニカ) 「ちゃり」の意味・わかりやすい解説
ちゃり
人形浄瑠璃(じょうるり)・歌舞伎(かぶき)用語。滑稽(こっけい)な演技・演出、またはその役。「茶利」の字をあてることもある。語源未詳。人形浄瑠璃では、『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』の「宝引(ほうびき)」、『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)』の「油店(あぶらみせ)」、『生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)』の「笑い薬」など、笑わせることを目的とした場面を「ちゃり場」とよび、これは『和田合戦女舞鶴(わだがっせんおんなまいづる)』の四段目口(くち)で鶴岡(つるがおか)の別当阿闍梨(あじゃり)が敵を欺く滑稽な場面を「阿闍梨場」とよんだのがなまったというが、明らかでない。ちゃり場を得意とする太夫(たゆう)をちゃり語り、歌舞伎では道化がかった敵(かたき)役をちゃり敵とよぶように、だいたい三枚目と同義語。関西では、道化たこと、道化者を表す方言にもなっている。
[松井俊諭]