関西の方言で,道化(どうけ)たこと,あるいは道化者を意味する。また人形浄瑠璃や歌舞伎の道化役や滑稽な場面(チャリ場)をいう。語源は1736年(元文1)大坂豊竹座初演の浄瑠璃《和田合戦女舞鶴》の四段目の口で鶴岡の別当阿闍梨(あじやり)が手負いのまねをして敵を欺く滑稽な語りが評判となり〈阿闍梨場〉と呼んだのから転訛したとの説があるが,むしろ〈茶化す〉〈戯(ざ)れる〉などの語と関係が深いのではないか。茶利の文字を当てることもある。浄瑠璃の代表的チャリ場としては《一谷嫩軍記》の〈宝引(ほうびき)〉,《ひらかな盛衰記》の〈辻法印〉,《染模様妹背門松》の〈油店〉などがあり,また三枚目役に使う文楽のかしらをチャリ首(リチャ)と総称する。
執筆者:山田 庄一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
人形浄瑠璃(じょうるり)・歌舞伎(かぶき)用語。滑稽(こっけい)な演技・演出、またはその役。「茶利」の字をあてることもある。語源未詳。人形浄瑠璃では、『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』の「宝引(ほうびき)」、『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)』の「油店(あぶらみせ)」、『生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)』の「笑い薬」など、笑わせることを目的とした場面を「ちゃり場」とよび、これは『和田合戦女舞鶴(わだがっせんおんなまいづる)』の四段目口(くち)で鶴岡(つるがおか)の別当阿闍梨(あじゃり)が敵を欺く滑稽な場面を「阿闍梨場」とよんだのがなまったというが、明らかでない。ちゃり場を得意とする太夫(たゆう)をちゃり語り、歌舞伎では道化がかった敵(かたき)役をちゃり敵とよぶように、だいたい三枚目と同義語。関西では、道化たこと、道化者を表す方言にもなっている。
[松井俊諭]
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