チャレンジャー号(読み)ちゃれんじゃーごう(英語表記)Challenger

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャレンジャー号」の意味・わかりやすい解説

チャレンジャー号
ちゃれんじゃーごう
Challenger

イギリスの海洋観測艦。

(1)木製のコルベット艦で、蒸気機関を有する帆船。長さ65メートル、2306トン。1858年ウールウィッチで建造。1872年から1876年にかけて、艦長ナーレス、隊長トムソン指揮のもとに有名な世界周航の海洋大探検を行った。この観測がもとになって50巻に上る膨大な『チャレンジャー報告』が出版され、近代海洋学が創始された。大探検の途次、1875年(明治8)には横浜、横須賀(よこすか)、神戸などに寄港している。

(2)1931年から第二次世界大戦後の1953年まで就役した測量艦。長さ66.8メートル、幅10.9メートル、喫水3.8メートル、排水量1140トン、乗員84名。1950年5月から2年半にわたり、艦長リッチー、隊長ガスケルの指揮のもとに深海観測に重点を置いた世界周航海洋大観測を行った。成果の一つとして、1951年に発見した当時世界最深のチャレンジャー海淵(かいえん)(1万0863メートル)がある。観測の途次、1951年(昭和26)に東京などに寄港している。なおチャレンジャー海淵は、その後の調査で1993年世界最深の1万0920メートルと確定された。

 このように栄光伝統のある「チャレンジャー」の名称は、1971年に進水した現在のイギリスの観測船(988トン)に引き継がれている。

[半澤正男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チャレンジャー号」の意味・わかりやすい解説

チャレンジャー号
チャレンジャーごう
Challenger

イギリスの海洋調査船。 2305tの木造帆走軽巡洋艦。海洋調査のため 1872~76年大西洋,太平洋インド洋南極海に及ぶ広範囲海域で活躍し,巡航距離は延ベ 12万 8000kmに及んだ。観測を行なった場所は 362地点,生物や海水,底土の採集点数は数万個。その学術上の成果は,その後二十数年をかけて全 50巻の報告書にまとめられ,海洋調査史に大きな足跡を残した。近代海洋学の基礎は『チャレンジャー報告』によって築かれたといわれる。

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