ヒガンバナ科の塊茎性球根植物。この仲間はメキシコに約12種あるといわれているが,栽培されているのは本種のみで,すでに16世紀末にはヨーロッパに知られていた。しかし,この種の野生品は発見されていない。春植えの球根で,夏に咲く香り高い花として有名で,夕方より強い芳香を放ち,中国や日本ではゲッカコウ(月下香)の名で呼ばれる。また日本で俗にイエライシャン(夜来香)と呼ばれるが,中国では夜来香とはヤコウボク,マツヨイグサ,Telosma cordata(Brum.f.)Merr.などをさす。中国名は晩香王。草丈約1mでらっぱ状の白花を穂状に多数つけ,下より順次開花する。切花として水揚げがよく,夏の生花に多用されている。一重咲品種や八重咲品種があり,一重の方が香りが高い。地温が上がらないと球根から発根しない。それで東京では,気温もあがる4月下旬~5月上旬くらいに植える。土地はやや重い深い耕土で,日当りのよい所が望ましい。
花はインドネシアで中国料理のスープに利用されるという。また香油tuberose flower oilが花1tから1kgほど抽出され,香水の原料として重用される。現代のフランス香水の大部分には多少とも混入されているという。
執筆者:川畑 寅三郎
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リュウゼツラン科(APG分類:キジカクシ科)の球根性多年草。原産地はメキシコとされる。地下に塊茎があり、長さ30~50センチメートル、線形の葉を束生する。秋に1メートルほどの花茎を立て、穂状花序をつける。花は乳白色の6弁花で各節に2個ずつつき、下方から順に上へ咲き上る。夕刻から咲き始め、花に香りがあるのでゲッカコウ(月下香)の名がある。また中国語読みで、イエライシャン(夜来香)の名でよばれることもあるが、中国名で夜来香と記される植物は中国南部からインドにかけて自生するガガイモ科(APG分類:キョウチクトウ科)のつる草Telosma cordata Merrであり、呼び名が混乱している。寒さにはやや弱く、暖地で育てた球根を求めて春植えすると、秋には花がみられる。一般には温室栽培の切り花用とされ、晩夏から初秋にかけて出回る。
[鳥居恒夫 2019年5月21日]
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