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朝鮮半島の中東部,太白山脈を中心とする地域。朝鮮八道の一つで嶺東地方とも呼ばれる。現在,金剛山などの軍事境界線の北側は,元山市やその周辺と合併して朝鮮民主主義人民共和国側の江原道(道都所在地,元山)をなし,南側は韓国側の江原道(道庁所在地,春川)をなしている。韓国側江原道の人口は147万(2005)。共和国側は不明。
北西から南東へ走る1500m内外の太白山脈によって本道の大部分が覆われている。太白山脈の東側は急崖をなして落ちこみ,山麓から海岸までは10kmほどの幅しかなく,広い平野がみられない。長い海岸線は単調で,良港は三陟,注文津,束草などわずかである。山脈の西側は緩傾斜をなしながら漢江の河床に至るが,みるべき平地としては春川・原州盆地だけである。太白山脈は金剛山,雪岳山など奇岩奇景の景勝地となっている。太白山地は水力,山林資源に恵まれているほか,太白山地域を中心に石炭(韓国の埋蔵量の90%以上),石灰石,タングステン等の希少地下資源の宝庫となっている。
李朝初に朝鮮八道の一つとして設置されたが,険峻な山脈によって交通が妨げられ,東は江陵,西は原州を行政・軍事の中心として管轄されてきた。日本植民地時代に太白山地の山林・地下資源開発のため,東西が鉄道で結ばれたが,大部分の地域が交通上僻地としてとどまり,1970年代初めまで火田民(焼畑農業を生計とする農民)が10万を超えていた。
共和国側地域では元山を中心に車両工場や造船所,セメント工場などがあり,豊富な地下資源を背景とした鉱業や,紙や靴などの日用品を中心とする軽工業なども展開している。農業はトウモロコシなどの雑穀が中心で,ほかにタバコなどの工芸作物や畜産なども奨励されている。韓国側では最大の山林資源を保護するため,火田整理を進める一方,近年には大関嶺を中心とする緩傾斜を利用して大規模な牧場を開発,肉牛・乳牛飼育を進めている。原州一帯の山麓では階段畑を造成して,桑やビール麦の主産地が形成されており,製糸,ビール製造業が発達している。太白山地域は石炭,石灰石,タングステンなど韓国最大の鉱業地帯となっており,東海市ではそれを背景にセメント,化学工業が盛んである。束草,注文津は日本海のメンタイ漁業の中心である。
執筆者:谷浦 孝雄
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韓国(大韓民国)の北東部にある道。朝鮮戦争以来、北朝鮮と分断状態で現在に至っている。韓国の管轄下は面積1万6571.83平方キロメートル、人口148万4536(2000)。地形は東方に傾き、東に急傾斜、西に緩傾斜という傾動地塊をなす。太白(たいはく/テペク)山脈は新生代第三紀から褶曲(しゅうきょく)と断層運動を伴いながら徐々に隆起し、山頂や山腹に旧侵食面である平坦(へいたん)面が発達している。15度以上の急傾斜地が3分の2を占め、平地が少ない。南部の三陟(さんちょく/サムチョク)、寧越(ねいえつ/ニョンウォル)などには石灰岩が分布し、カルスト地形が発達している。金剛山(こんごうさん/クムカンサン)に源を発する北漢江は南流し、昭陽江、洪川江を合流して京畿道(けいきどう/キョンギド)に流入する。南漢江は五台山(ごだいさん/オデサン)に発し、平昌江、酒泉江などを合流して寧越付近で忠清北道(ちゅうせいほくどう/チュンチョンブクド)に流入する。これらの河川は、流域に春川(しゅんせん/チュンチョン)、洪川、原州などの侵食盆地を形成した。東側は大きな河川がなく、海岸線が単調であり、砂浜海岸には青草湖、鏡浦湖などの潟湖(せきこ)、岩石海岸には海食崖(がい)と海岸段丘などが発達した。気候は全般的に寒冷である。太白山脈の東方が西方に比べて気温が高く降水量が多く、とくに冬に降雪が多い。道庁所在地は春川。
農業は畑作が中心で、主要農産物はトウモロコシ、ジャガイモなどである。大関嶺地域では、高冷地農業と大規模経営の牧畜が盛んである。沿岸は寒暖流が会合して、よい漁場をなす。水力資源が豊富であり、三陟、旌善(せいぜん/ジョンソン)、寧越などの石炭は全国の70%前後を占有し、上東(じょうとう/サンドン)のタングステンは世界的である。三陟、東海(とうかい/トンヘ)、寧越などでは、セメント、鉄鋼、油脂など重化学工業中心の太白山工業地帯をなす。1980年代よりエネルギーの需給の変化や環境問題などによる炭鉱の閉山が相次ぎ、炭鉱産業の衰退が進んだ。嶺東高速道路と東海高速道路の開通、産業鉄道の電化などで交通が便利になった。雪岳山国立公園、五台山国立公園、関東八景、海水浴場など観光資源が豊富である。
[森 聖雨]
北朝鮮の南東部にある道。朝鮮戦争以来、韓国と分断され、現在に至っている。北朝鮮管轄下は面積約1万平方キロメートル。朝鮮半島の脊梁(せきりょう)山脈である太白(たいはく/テペク)山脈が半島の東海岸(日本海側)に寄りながら南北に延び、西部は低山性の阿虎飛嶺(あこひれい)山脈と馬息嶺山脈が南北方向へ走っている。これらの山脈に沿い、北漢江と臨津江(りんしんこう/リムチンカン)が南方へ、南大川が北方へ流れている。平均気温は10℃内外、年降水量は1300ミリメートルで、同緯度上の他の地域より多い。道庁所在地は元山(げんざん/ウォンサン)。
産業は広い山間盆地における畑作物や河川流域の米作が主であったが、行政区画の改編によって咸鏡南道(かんきょうなんどう/ハムギョンナムド)から編入された元山、文川と安辺地域は国内有数の工業地帯となっている。元山の機関車工場、造船所、川内(せんだい)郡の川内里セメント工場、文川郡の鉛・亜鉛の文坪(ぶんへい)製錬所など、重工業が行われている。このほか元山、文川の機械工業がある。鉱山資源は柯銀(かぎん)鉱山の鉛・亜鉛、法洞鉱山のタングステン、昌道鉱山の硫化鉄、鉄原鉱山のマンガン採掘が行われている。水産業は北朝鮮第三の漁獲量があり、文川、元山、通川、高城の水産事業所ではサバ、メンタイ(スケトウダラ)、ニシン、カレイなどの水揚げがある。農業はトウモロコシ、大豆、小麦などの畑作物が主で、養蚕業も行われている。
[魚 塘]
「カンウォン(江原)道」のページをご覧ください。
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