ツァンカル(読み)つぁんかる(英語表記)Ivan Cankar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツァンカル」の意味・わかりやすい解説

ツァンカル
つぁんかる
Ivan Cankar
(1876―1918)

スロベニア小説家劇作家リュブリャーナの工業学校を卒業後、ウィーンの工科大学に進むが中退し、創作に専心。最初は詩人として出発したが、のち散文に転じた。蒲柳(ほりゅう)の質のうえ酒に耽溺(たんでき)、困窮の生活を異郷の地で送るが、人間の善性を信じ、正義感にあふれ、抑圧された人々の側にたち、社会悪に対して鋭い批判を浴びせた。辛辣(しんらつ)な風刺と豊かな叙情性に満ちた短編連作を得意とし、同時代の社会を力強い筆致で描いた。小説『異邦人』(1901)、『斜面にて』(1902)、『マルチン・カチュール』(1906)、未完自伝小説『わが生活』(1914)、戯曲『召使たち』(1910)などは評価が高い。

[栗原成郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツァンカル」の意味・わかりやすい解説

ツァンカル
Cankar, Ivan

[生]1876.5.10. ブルフニカ
[没]1918.12.11. リュブリャナ
スロベニアの詩人,小説家,劇作家。青年時代ウィーンに留学し,その後も長年ウィーンで生活した。処女詩集『エロチカ』 Erotika (1899) ,小説『外国人たち』 Tujci (1901) ,『ミランとミレナ』 Milan i Milena (13) ,戯曲『国民の幸福のために』 Za narodov blagor (01) などが有名。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android