ツァンカル(その他表記)Ivan Cankar

改訂新版 世界大百科事典 「ツァンカル」の意味・わかりやすい解説

ツァンカル
Ivan Cankar
生没年:1876-1918

ユーゴスラビアの文学者。スロベニアの生れ。ウィーン工芸を学ぶが身につかず,ジャーナリズム文芸に転じる。処女詩集《エロチカ》(1899)はあまりにも反社会的だとして,リュブリャナ司教にすべて焼却された。多くの短編,中編,戯曲,政治的文書を著したが,代表作は,少女の心理を洞察した《マリア養護施設》(1904)と社会悪を暴いた《下男イェルネイと正義》(1907)。モダニズムを導入してスロベニア現代文学の開祖となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツァンカル」の意味・わかりやすい解説

ツァンカル
つぁんかる
Ivan Cankar
(1876―1918)

スロベニアの小説家劇作家リュブリャーナの工業学校を卒業後、ウィーンの工科大学に進むが中退し、創作に専心。最初は詩人として出発したが、のち散文に転じた。蒲柳(ほりゅう)の質のうえ酒に耽溺(たんでき)、困窮の生活を異郷の地で送るが、人間の善性を信じ、正義感にあふれ、抑圧された人々の側にたち、社会悪に対して鋭い批判を浴びせた。辛辣(しんらつ)な風刺と豊かな叙情性に満ちた短編連作を得意とし、同時代の社会を力強い筆致で描いた。小説『異邦人』(1901)、『斜面にて』(1902)、『マルチン・カチュール』(1906)、未完自伝小説『わが生活』(1914)、戯曲『召使たち』(1910)などは評価が高い。

[栗原成郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツァンカル」の意味・わかりやすい解説

ツァンカル
Cankar, Ivan

[生]1876.5.10. ブルフニカ
[没]1918.12.11. リュブリャナ
スロベニアの詩人,小説家,劇作家。青年時代ウィーンに留学し,その後も長年ウィーンで生活した。処女詩集『エロチカ』 Erotika (1899) ,小説『外国人たち』 Tujci (1901) ,『ミランとミレナ』 Milan i Milena (13) ,戯曲『国民の幸福のために』 Za narodov blagor (01) などが有名。

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世界大百科事典(旧版)内のツァンカルの言及

【ユーゴスラビア】より

…また言語の統一とともに各民族間の文学交流が生まれた。とくに20世紀に入ってから,アンドリッチらが編集した《南方文芸》(1918-19)にツァンカルクルレジャらも寄稿して,南スラブ諸族の文化的・文学的な協働が始まった。 20世紀に入って1918年には南スラブ諸族の統一国家ユーゴスラビアが成立するが,この20世紀の文学はスロベニアのモダニズム運動で幕をあける。…

※「ツァンカル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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