日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツガザクラ」の意味・わかりやすい解説
ツガザクラ
つがざくら / 栂桜
[学] Phyllodoce nipponica Makino
ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。茎の下部は横にはい、上部は直立して高さ10~20センチメートル。葉は密に互生し、線形で長さ5~8ミリメートル、表面は濃緑色で光沢がある。7~8月、枝先に2~6本の花柄を直立し、その先に白色で淡紅色を帯びた鐘形の花を横向きに開く。花冠は長さ約6ミリメートルで先は浅く5裂する。花柄は長さ1~2.5センチメートルで腺毛(せんもう)が多い。果実は扁球(へんきゅう)形の小さな蒴果(さくか)で上を向く。高山帯の岩の割れ目や礫地(れきち)などに生え、本州の東北地方中部から中国地方、愛媛県の赤石山に分布する。名は、葉がツガの葉に似て、桜色の花をつけることによる。近縁のアオノツガザクラは茎葉はツガザクラに似るが、花は淡黄緑色の壺(つぼ)形で下向きに開く。中部地方以北の本州、北海道の高山帯に生え、アラスカに分布する。別の近縁種エゾノツガザクラは卵状壺形の紅紫色花を下向きに開く。高山帯に生え、本州北部、北海道に分布する。ツガザクラ属は北半球の高山や寒地に7種ほど知られる。
[小林義雄 2021年4月16日]