日本大百科全書(ニッポニカ) 「つるし雲」の意味・わかりやすい解説
つるし雲
つるしぐも
気流が山を越えたときに生じる山岳波によってできる雲の一種。前線面が山の中腹または山頂に近い高さに存在すると、風が山を乗り越えたあとに上下にうねり現象が生じる。谷川などで岩の後ろの水面が上下に波打つ現象と似ている。前線面が水面と同じ働きをするのである。つるし雲は、山の10キロメートルから20キロメートル後方で、波が盛り上がったところに発生する。風が強くても位置は動かないのが特徴である。一般に輪郭が丸く、円筒形、紡錘形、翼のような形などさまざまな形態を呈する。笠雲(かさぐも)、レンズ雲と同種のものである。イタリアのシチリア島にあるエトナ火山の風下に発生するつるし雲は「風の伯爵夫人」contessa del vento(イタリア語)とよばれる。
[木村龍治]