ティンパニ(その他表記)timpani[イタリア]
kettledrums

デジタル大辞泉 「ティンパニ」の意味・読み・例文・類語

ティンパニ(〈イタリア〉timpani)

打楽器の一。鉢形の胴の上面牛皮合成樹脂皮膜を張った太鼓周囲ねじ、または支柱ペダル音高を調整する。ふつう、異なった音高のものを二つ以上並べて奏する。

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精選版 日本国語大辞典 「ティンパニ」の意味・読み・例文・類語

ティンパニ

  1. 〘 名詞 〙 ( [イタリア語] timpani ) 打楽器の一つ。半球形の深い胴に、皮膜・プラスチック膜を張り、周囲のねじによって膜の張力を調節し調律する。古代の壺型の太鼓から進化し、一三世紀十字軍とともに中東を経てヨーロッパに導入され、管弦楽の一楽器にまで発達した。ケットルドラム。〔洋楽手引(1910)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「ティンパニ」の意味・わかりやすい解説

ティンパニ
timpani[イタリア]
kettledrums

卵形を半分に切った大鍋形の胴をもつ銅製の太鼓の一種。開口部に直径よりやや大きなフープに巻き付けた革をかぶせる。その革の張力を加減することによって音程を変えるためのねじが6~8ヵ所取り付けてある。打点は音響上膜面の中心を避け,半径の1/3の外側の部分が最適である。三脚にのせフェルト等の桴(ばち)で奏する。現在,直径32インチ(約81cm),29インチ(約74cm),26インチ(約66cm),23インチ(約58cm),20インチ(約51cm)の各サイズがあり,およそ〈に音〉から2オクターブの音を出せる。膜鳴の打楽器で明確な音程が出せる唯一の楽器であるところからオーケストラで重要な位置を占めるようになって,時代とともに機構は改良された。革を張っただけの時代,ねじによる方法は16世紀ころ,1ヵ所のねじで全体の音程を変えられるマシーン式は1812年ころ,胴自体を回すロータリー式は1820年ころ,ペダル操作による方法は1850年ころで,これにより速やかに音程を変えられ,グリッサンド奏法も可能となり演奏表現は豊かになり技術も高度になった。

 ティンパニの起源はアラビアに伝わるナッカーラとされている。11世紀トルコの軍隊が馬の背の左右に振り分け木の桴で打っていたものを十字軍がヨーロッパに持ち帰って以来王侯貴族の軍隊に広まったといわれる。軍楽隊ではトランペットとティンパニが花形であり,1623年ドイツでは両楽器奏者のエリートを教育するための組合が作られた。1683年ベルサイユ宮殿の宮廷作曲家ダニカン・フィリドールAndré Danican Philidor(1647ころ-1730)は軍楽隊のために2組のティンパニだけの曲を書いている。オーケストラにティンパニを導入したのはリュリであった。ベートーベンはそれまでの主音,属音だけの使用を発展させ,減4度,短6度,オクターブ,2個のティンパニを同時に打たせる方法等を考え出した。また,強弱の幅も広げ,より独奏的に扱い,音に象徴性を与え音楽芸術に不可欠なものとした。さらにベルリオーズは音響効果をあげるために16個のティンパニを10人の奏者でハーモニーを奏させたり,音色の変化を求めて桴の改良を試みた。現代では革のほかにプラスチックのものが広く使われている。
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百科事典マイペディア 「ティンパニ」の意味・わかりやすい解説

ティンパニ

太鼓の一種で,オーケストラで重用される打楽器。英語ではkettledrums。アラビア起源。金属製の半球に1枚の皮を張り,桴(ばち)でたたいて演奏する。直径は60〜80cmで,直径と皮の張力によって音律は異なるが,約1オクターブ内で音律を調整することができ,明確な音高が得られる。17世紀後半,トランペットと共に管弦楽に採用され,ベートーベンベルリオーズにより表現力を一躍高めた。今日主に使用されるのは,19世紀半ばに開発されたペダル式(足でペダルを操作)の楽器で,グリッサンド奏法も可能。ふつう4個を組にして用いる。
→関連項目管弦楽ドラム(楽器)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティンパニ」の意味・わかりやすい解説

ティンパニ
てぃんぱに
timpani(単数形tinpano) イタリア語
kettledrum(s) 英語
Pauke(n) ドイツ語
timbale(s) フランス語

半球形の胴をもつ太鼓の一種。西アジアの2個1組からなる小形の釜(かま)形太鼓ナッカーラに由来する。オーケストラでは、17世紀から使用されている。直径58~76センチメートルのものが多く用いられ、大きさの異なる2台以上を並べて使うのが通例である。1個だけを使うのは例外的であり、複数形でよぶのが普通。

 明確な音高をもち、それを5度程度の範囲で変えることができる。直径76センチメートルのもので、通常、D2が最低音である。もっとも単純な手締めティンパニは、胴の周囲の数本のハンドルを回して膜の張力を変えることで音高を変える。一つのハンドルを回すだけで膜全体の張力を調節できる機構をもつのがマシーン・ティンパニ、ペダル操作によるのがペダル・ティンパニである。硬軟さまざまな材質の桴(ばち)(スティック)を使い分けて音色を変える。

[前川陽郁]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ティンパニ」の意味・わかりやすい解説

ティンパニ
timpani

楽器の一種。銅製の釜形の胴に1枚の皮を張った一定の音律の出せる太鼓。一般に2個以上用いられ,2本の桴 (ばち) で打奏する。 17世紀なかば頃現れて以来,管弦楽の打楽器中,最も重要な地位を占めている。

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世界大百科事典(旧版)内のティンパニの言及

【太鼓】より

…膜状の物質,主として動物の革を張りつめて弾力をもたせ,これを打って音を出す楽器の総称。原始時代から諸民族の中に深く浸透していた楽器の一種であり,最古のものは前約2500年,シュメールの浮彫に見られる。現在に至るまで多くの地域で呪術信仰と密接に結びついており,神聖視されていて,材料の選択や製作過程に厳格な掟をもつ地域もある。アフリカの民俗の中では,月・実り・母などの女性的象徴,太陽・再生などの男性的象徴となっているほか,一個の人格と同様に扱われて食物や犠(いけにえ)がささげられたり,悪霊払いにも広く用いられている。…

【太鼓】より

…膜を胴に直接膠着させたり,鋲(びよう)を打って取り付ける太鼓では,緊張度の調節は不可能であるため,音高や音色を調整することは基本的には不可能であるが,奏者が随時ひじやかかとあるいは手などで膜面を押しつけて緊張度を高め,音を高くする方法が用いられることがある。ティンパニに代表されるヨーロッパのケトル・ドラムkettle drum(鍋形太鼓)は古くからトランペットの低音域を補う役目をもっていたので正確な音高が必要とされ,膜はまず金属の枠に巻き付けられたうえ,胴にねじで取り付けられるという方法が16世紀初めから用いられ,音高調節を容易にしていた。19世紀以後この装置に種々の機械的発明・改良が行われ,現在ではグリッサンドも可能な,ペダルによる音高調節装置も使用されている。…

【ナッカーラ】より

…昔は小さいものは馬,中くらいはラクダ,最大のものは象で運ばれたといい,おもにスルタン直属の軍楽隊でのみ用いられた。西洋のティンパニの元祖である。またトルコのスーフィーの宗教音楽や伝統的芸術音楽では,ナッカーラと同種の太鼓をクデュムkudümと称する。…

※「ティンパニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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