改訂新版 世界大百科事典 「テングザル」の意味・わかりやすい解説
テングザル
Nasalis larvatus
霊長目オナガザル科の旧世界ザル。天狗のような長い鼻をもつサル。コロブス亜科の他の仲間と異なり,体ががんじょうで性差が大きい。雄の頭胴長は70cm,体重20kg。雌はそれぞれ60cm,10kg。尾長は頭胴長ほど。背は赤褐色,腹,尾,四肢は白っぽい。顔は茶色に近い肌色。新生児の顔は濃青であるがだんだん赤くなる。おとなの雄の鼻は10cm近くになり,少し垂れ下がる。これは発声の共鳴器となっているらしい。雌の鼻は雄の半分くらい。子どもの鼻は小さく上向きで,シシバナザルの鼻によく似ている。ボルネオ島のマングローブ林,湿地林,低地林に生息し,木の葉や芽が主食。比較的よく地上に降りるほか,泳ぎと潜水が得意で,外敵から逃げるとき15m以上の樹上から水に飛び込んだり,5mも潜ったりする。10~30頭の雌が多い複雄群をつくる。遊動域は1~1.5km2。離合集散するルーズな群れをつくるという報告もある。現地ではペットとして飼われ,近年は動物園でも飼育できるようになった。
執筆者:黒田 末寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報