ディオドロス(読み)でぃおどろす(英語表記)Diodoros Siculus

改訂新版 世界大百科事典 「ディオドロス」の意味・わかりやすい解説

ディオドロス(タルソスの)
Diodōros
生没年:?-390ころ

アンティオキア学派神学者。タルソスTarsos主教(378より)。アリウス教説を攻撃し,ニカエア派の正統信仰の擁護者とたたえられた(381,第1コンスタンティノープル公会議)。ローマ皇帝ユリアヌスとの論争も知られている。神学者としては,聖書の逐語的解釈を重視するアンティオキア学派の立場を代表した。しかし没後アレクサンドリアキュリロスによってネストリウス的異端かどで非難された。
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ディオドロス
Diodōros

前1世紀後半の歴史家生没年不詳。シチリア島出身のギリシア人。前60-前30年ころ,《歴史叢書》と題する古代の世界史40巻を著した。これはオリエント古史からカエサルのガリア征服までを編年体で叙述したものであり,現在1~5巻,11~20巻が完全に,他は断片だけが残る。今日散失した諸史料を含んでいる点では貴重であるが,内容は通俗的で,彼の歴史家としての評価は高くない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディオドロス」の意味・わかりやすい解説

ディオドロス
でぃおどろす
Diodoros Siculus
(前90ころ―前21ころ)

古代ローマのギリシア系歴史家。シチリアのアグリウム出身。ストア哲学の影響を受け、ギリシア、ラテン史籍を読み、ヨーロッパ小アジアの各地を旅行、30年をかけて40巻に及ぶ『歴史文庫』とよばれる「世界史」を著述した。そこでは、エジプト、メソポタミアからカエサルのガリア征服までが叙述され、独創性に乏しいが、読みあさった文献から史実を忠実に採録している。第1~5巻、第11~20巻は現存しているが、ほかは断片だけである。そのなかに、2回にわたるシチリア奴隷蜂起(ほうき)(前1世紀)、ユートピア的な平等な生活を描いたイアムブロスの「太陽の島」の伝承など貴重な記録が含まれている。

[土井正興]

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