改訂新版 世界大百科事典 「デナム」の意味・わかりやすい解説
デナム
John Denham
生没年:1615-69
イギリスの詩人。オックスフォード大学に学んだのち,法律を修めたが,劇《ソフィー》(1641上演)で文学者としての成功も得た。ピューリタン革命中は王党派に属し,一時海外に亡命。帰国後も,いわばレジスタンスとも呼ぶべき運動をひそかに続けた。詩人としての名声は,長詩《クーパーの丘》(1642発表,1655刊)によって決定的となる。これはロンドンからテムズ川をややさかのぼったところにある彼の所領の高みから,近くのウィンザー城を眺め,テムズ川を見はるかし,イギリスの歴史に思いをはせたりする内容で,のちに〈眺望詩〉と呼ばれる小ジャンルを確立した。措辞の巧まざる流麗,表現の自然な優雅さは,次の王政復古期の英詩の模範となりえたものである。さらにはその整然と行末で区切られる英雄対韻句形式は,理性的冷静さで道徳的考察を展開するのに適しており,A.ポープら18世紀英詩人にも影響を与えた。
執筆者:川崎 寿彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報