トゥルンワルト(読み)とぅるんわると(その他表記)Richard Thurnwald

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥルンワルト」の意味・わかりやすい解説

トゥルンワルト
とぅるんわると
Richard Thurnwald
(1869―1954)

ドイツ民族学社会人類学者。9月18日ウィーンに生まれた。ボスニアで官吏養成用の法学教育を受けた後に民族学研究を志し、ベルリン民族学博物館助手になり(1901)、ハレ大学に移り(1919)、1924年以後ベルリン(自由)大学教授となった。ソロモンビスマーク、ニューギニアなどオセアニア各地のほかにタンザニアでも調査した。機能主義的立場をとりながら、同時代のイギリス社会人類学とは一線を画し、社会組織経済・技術の相互関係、植民地体制下の社会変化を進化主義・歴史主義的側面から考察した。総合的性格ゆえに研究成果は正確に評価されにくかったが、今日ではドイツ社会人類学の創始者として重要視されている。1月19日ベルリンで没。R・H・ローウィによる略伝Richard Thurnwald 1869-1954』が利用しやすい。

[佐々木明 2018年12月13日]

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改訂新版 世界大百科事典 「トゥルンワルト」の意味・わかりやすい解説

トゥルンワルト
Richard Thurnwald
生没年:1869-1954

オーストリア出身の民族学者,社会学者。ウィーンに生まれ,ドイツのベルリン大学教授として活躍した。メラネシア,ニューギニアにおける実地調査,および概説書《人類社会,その民族社会学的基礎》全5巻(1931-35)によって知られている。その学風は,機能主義的立場と歴史主義的考察法とを併用した特色あるもので,百科全書的な博識にもとづいて,おおむね穏当な判断を下していた。文化の発達については,技術などの不可逆的累積を特徴とする領域と,宗教美術などそうでない領域とに分けた。弟子なかに,理論民族学のW.E.ミュールマン,中国研究のW.エーバーハルトがいる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トゥルンワルト」の意味・わかりやすい解説

トゥルンワルト
Thurnwald, Richard Cristian

[生]1869.9.18. ウィーン
[没]1954.1.19. ベルリン
ドイツの機能主義を代表する民族学者,社会学者。ウィーン大学法学を学び,のちに民族学,社会学に興味をもつようになった。 1906~09年ソロモン諸島,12~15年ニューギニアを現地調査。 24年ベルリン大学教授。アメリカで諸大学の客員教授をつとめ,30年には東アフリカなどの現地調査を通じて新しい民族学的資料を収集し,親族組織や原始経済についての機能的研究を行なった (→民族心理学 ) 。『民族心理学および社会学雑誌』『人類学および民族研究彙報』を主宰。主著"Ethnopsychologische Studien an Südsee-Völkern" (1913) ,"Primitive Psychologie" (22) ,"Lehrbuch für Völkerkunde" (39) 。

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百科事典マイペディア 「トゥルンワルト」の意味・わかりやすい解説

トゥルンワルト

ドイツの人類学者,社会学者。ビズマーク,ソロモン両諸島,ニューギニア,東アフリカ等の調査において機能主義的考察を展開。社会組織と行動の相互関係,経済,文化変容,国家組織の研究に力を注いだ。個別の研究を越え,広範な比較研究によって歴史的発展の法則性にも注目。著書《人類社会,その民族社会学的基礎》。

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世界大百科事典(旧版)内のトゥルンワルトの言及

【国家】より

…要するにこの種の組織化が始まることによって,当初は一時的であり限定されていた指導権が恒久化し強化され,ついには世襲化ないしは制度化されて,国家的機構の基礎が築かれるというのである。 従来,国家の起源をめぐって,たとえばF.オッペンハイマーやR.トゥルンワルトが唱えた征服説や,K.A.ウィットフォーゲルの灌漑説などが注目を浴びたが,それらは,サービスの理論によれば,上述の組織化と指導権の制度化を生み出すいくつかの要因の一つにすぎないことになる。国家形成へいたる道筋は必ずしも一つではなく複数でありうるという見解はR.コーエンやL.クレーダーによっても示されている。…

※「トゥルンワルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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