日本大百科全書(ニッポニカ) 「アムダリヤ」の意味・わかりやすい解説
アムダリヤ
あむだりや
Аму‐дарья/Amu-dar'ya
アラル海に注ぐ中央アジア最大の川。古代ギリシアではオクソスoxos、ラテン名ではオクススまたはオクサスoxus、アラビア語でジェイフンJayhunとよばれた。アムダリヤはペルシア語起源で、ロシアや中央アジア諸国ではこの名でよばれ、ウズベキスタン語ではAmudaryoと綴られる。長さ2620キロメートル、流域面積46.5万平方キロメートル。アフガニスタン領内パミール高原の標高4765メートルの氷河に発する。ヒンドゥー・クシ山脈を北西に流下し、タジキスタン共和国とアフガニスタンとの国境をなし、ついでウズベキスタン共和国とアフガニスタンとの国境を西流して、のちトルクメニスタン、ウズベキスタンの両共和国を経てアラル海に注ぐ。河口には面積約7000平方キロメートルのデルタを形成している。
中・下流部は広大なカラクム、キジルクムの両砂漠で、流入する支流はなく、流量の25%が灌漑(かんがい)や蒸発のために失われる。中流部オバ(キジル・アヤク)に始まるカラクム運河は1986年に完成、カラクム砂漠へ灌漑用水を大量に送っている。そのため、アラル海の異常な水位低下を招き、漁業や環境に深刻な影響を与える「アラル海問題」が発生した。アムダリヤは河口から1000キロメートルのテルメズまで航行でき(秋冬の渇水期には河口から600キロメートル上流のトルクメナバート止まり)、カラクム運河はアシガバート東部のマリーまで航行可能。流量は河口で毎秒1300立方メートルで、ロシアの川のなかでもっとも多く固形物質を運搬し、河口で年間43立方キロメートルの流水中1億トンに達する。かつてしばしば氾濫(はんらん)して流路を変えたため、「暴れ川」すなわちアムダリヤの名がついた。タマリスク、アシなどからなる中・下流部河岸のオアシスとデルタ地帯では、米、綿花、メロン、ブドウなどが栽培され、また乳牛やヒツジが飼育されている。漁獲はチョウザメ、コイなどがある。また上流部支流では水力発電が行われている。
[保谷睦子]