改訂新版 世界大百科事典 「トビイロケアリ」の意味・わかりやすい解説
トビイロケアリ
Lasius niger
膜翅目アリ科の昆虫。日本ではもっともふつうに見られるアリの1種。働きアリの体長は3~4mm,全体に黒褐色で短い軟毛を密生し,腹柄は1節で毒針がない。北アフリカ,ヨーロッパ,アジアの温・亜寒帯,北アメリカ北西部に分布し,日本では九州以北に分布,本州中部では平地から亜高山帯にまで生息している。巣は土の中につくられることもあるが,樹木の根もとの腐朽部や湿った朽木の中に多い。アブラムシや花の分泌するみつ液を集め,小型の昆虫なども食物とする。しばしば行列をつくって活動し,通路の一部をおがくず状の木片や土でトンネル状に覆い,またその中でアブラムシの類を飼養していることがある。春期には女王アリの腹部は大きく膨らみ,数千個の卵を産む。羽アリは7,8月ころ,日没の前後に飛び出し,灯火にも飛来する。働きアリが家屋内に侵入し,砂糖などに群がることがある。
→アリ
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報