トラピスト修道会(読み)トラピストしゅうどうかい(その他表記)Trappistes

改訂新版 世界大百科事典 「トラピスト修道会」の意味・わかりやすい解説

トラピスト修道会 (トラピストしゅうどうかい)
Trappistes

カトリック教会の一観想修道会。正式には1899年以来改革シトー会Ordo Cisterciensium Reformatorum,1902年以来厳律シトー会Ordo Cisterciensium Strictioris Observantiaeと称される。トラピストフランスノルマンディーオルヌ県にあるその改革修道院ラ・トラップLa Trappeから出た親称。同院はランセArmand-Jean Le Bouthillier de Rancé(1626-1700)が1664年シトー会の本来の修道生活を遵守しながら,厳格さを加えて改革した。彼の修道規則は78年インノケンティウス11世,1705年クレメンス11世によって認可された。フランス革命によって大打撃を受けたが,レストランジュAugustin de Lestrange(1754-1827)がその再建につとめた。1892年総会を開き,トラピスト諸修道院はシトー会からの独立を決議し,93年,1902年レオ13世によって同一修道規則に従う3修道家族が統合された。修道士(女)は聖務日課の共同歌唱の典礼を中心に農業や牧畜業を営む。82年現在修道院87,会員3045,そのうち司祭1477。男子修道会は1896年来日,現在修道院2,修道士50,女子修道会は98年来日し,現在4修道院があり,修道女は216である。
シトー会
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラピスト修道会」の意味・わかりやすい解説

トラピスト修道会
とらぴすとしゅうどうかい
Ordo Cisterciensium Reformatorum ラテン語

カトリック教会の修道会の一会派。改革シトー修道会または厳修シトー修道会が正式の名。カトリック教会内の観想修道会。17世紀にフランスのノルマンディーのラ・トラップLa Trappeに創立されたので、その地名からトラピスト会と通称された。11世紀終わりにベネディクト修道会から分かれたシトー修道会は、厳格な修道生活を営んできたが、14世紀中ごろには修道規則が緩み、もとの精神が失われてきた。17世紀ド・ランセ修道院長がこれをより禁欲的、観想的な方向に改革した。その生活様式は、厳重に沈黙や禁域制を守り、全修道士が農業や牧畜の労働に従事し、肉類魚類を食べず、独房を排して共住生活を営む。修道士たちは観想と贖罪(しょくざい)の生活を送り、祈りと労働を通じて神と一致し、完徳に達し、全人類の救いのために身を捧(ささ)げる。早朝に起きて、荘厳に聖務日課を歌い、ミサ聖祭を捧げる。日中は労働と聖書の黙想、神学の研究に従事し、たびたび教会に集まって、いっしょに聖務日課を唱える。ローマに本部があり、総会長が修道会全体を指導するが、大修道院は独立しており、その下にいくつかの分院をもっている。日本には1896年(明治29)に伝えられ、男子は北海道北斗(ほくと)市に大修道院があり、女子は函館(はこだて)市、栃木県那須(なす)町、兵庫県西宮市、佐賀県唐津(からつ)市に修道院がある。

[門脇佳吉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トラピスト修道会」の意味・わかりやすい解説

トラピスト修道会
トラピストしゅうどうかい
Ordo Cisterciensium Reformatorum seu Strictioris Observantiae; OCR; OCSO

改革シトー会 (厳律シトー会) の通称。フランスのラ・トラップ修道院に由来する。 1662年ド・ランセがこの修道院を改革,シトー会の生活様式に厳格さを加えた。厳重な沈黙,完全な共同生活,菜食 (のちに乳類を取入れる) を特色とする。 18世紀にド・ランセの改革は2つの修道院で採用されたにすぎなかったが,1792年フランス革命でこの改革シトー会はラ・トラップを追われ,スイス,ロシア,ドイツと彷徨する間に普及,拡大し続け,1960年には全世界に約 70の大修道院をもった。トラピストの諸修道院は 1892年の総会でシトー会から独立,94年教皇レオ 13世の認可を得た。会士は白の修道会服に黒のスカプラリオ (首から前後に垂らす長い布) を着用。 1689年ド・ランセのレ・クレレ修道院の改革に由来する女子トラピスチン会もある。 1896年来日,プイエを院長として当別 (北海道) に灯台の聖母修道院を創立。教授となった三木露風の詩で全国にその名を知られた。女子修道院は 98年函館の湯川に創建され,ほかに西宮,福岡,那須にも修道院がある。

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百科事典マイペディア 「トラピスト修道会」の意味・わかりやすい解説

トラピスト修道会【トラピストしゅうどうかい】

カトリックの厳律シトー会Ordo Cisterciensium Strictioris Observantiaeの親称。フランスのノルマンディー地方,ラ・トラップのシトー会修道院を1664年にド・ランセが改革したのに始まる。沈黙,非肉食,苦行,禁欲の厳格な戒律を守り,祈祷(きとう),布教援助,慈善事業などを行う。日本では男子修道会が1896年,女子修道会が1898年に伝わり,北海道を中心に発展している。

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世界大百科事典(旧版)内のトラピスト修道会の言及

【シトー会】より

…またその清貧の精神は簡素美を尊ぶ独特な教会堂建築に反映している。14世紀以降托鉢修道会の隆盛な活動に押されて衰退期に入るが,後世トラピスト修道会(厳律シトー会)の改革などによって復興する。【橋口 倫介】
[美術]
 クリュニー修道院の大規模な教会堂,壁画,彫刻,豪華な聖具を批判し,神についての瞑想を妨げる虚飾を断罪したベルナールの指導下に,シトー会では,ロマネスク建築の枠内で,清貧を旨とする単純厳格な建築が生み出された。…

※「トラピスト修道会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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