トリバネアゲハ(読み)とりばねあげは(英語表記)birdwing butterfly

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリバネアゲハ」の意味・わかりやすい解説

トリバネアゲハ
とりばねあげは / 鳥翅揚羽蝶
birdwing butterfly

昆虫綱鱗翅(りんし)目アゲハチョウ科の一群の総称。古くはトリバネチョウといっていたが、近年はトリバネアゲハとよぶことが普通。狭義ではOrnithoptera属(真正トリバネアゲハ属)に限定されるが、近年はそのほかに近縁Trogonoptera属(アカエリトリバネアゲハ属)およびTroides属(キシタアゲハ属)を含めて、広義に用いられる場合が多い。

 この仲間のチョウはすべて東南アジアの熱帯地方の産で、アフリカやアメリカ大陸には分布しない。幼虫の食草は知られる限りすべてウマノスズクサ科の植物である。

 真正トリバネアゲハ属のチョウは、ニューギニア島を中心に、東はソロモン諸島、西はモルッカ諸島にまで分布し、11種が知られる。チョウのなかでももっとも大形で、雄のはねは金緑色(または黄緑色)に輝く種がほとんどで、世界の美蝶(びちょう)の一つに数えられる。この仲間の1種アレクサンドラトリバネアゲハの雌は世界最大のチョウとして有名である。

 アカエリトリバネアゲハ属のチョウは、マレー半島スマトラ島ボルネオ島パラワン島フィリピン)に分布する1種(学者によりパラワン島産を別種とするものがあり、この説をとれば2種)があるのみ。

 キシタアゲハ属のチョウは、西はインドから東はニューギニア島にかけての熱帯から亜熱帯に分布し、全部で20種を数える。日本近隣では台湾地域に2種(キシタアゲハ、コウトウキシタアゲハ)が分布する。

白水 隆]

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